前号までのあらすじ
学校に興味を持ったちび恐竜のダイくん。連れて行ってと絵留に頼むが、もちろん答えはノー。ところが、ある朝学校に着くと、絵留のバッグの中にダイくんが忍び込んでいて…。
「ちょっと! なんでいるの?」
わたしはスクールバッグの中に向かって、小声で話しかけた。ダイくんは悪びれもせずに首だけをにゅっとつき出して、
「ここ、くらいし、くるしいからだして~」
と、普通の大きさの声で言った。
「わっ、小さい声にして! みんなに聞こえちゃうよ」
あわててそう言ったけど、遅かった。数学の森野先生が、こちらに近づいてくる。森野先生は、このクラスの担任でもある。
「坂下、授業始めてもいいか? いったいだれと話してるんだ。まさか、バッグの中に妖精でもいるのか?」
みんながくすくす笑っている。はずかしくて顔から火が出そうだ。
「ち、ちがいます」
とは言ったものの、まさか「恐竜です」とは口がさけても言えない。
「ひとり言です。すみません」
「そうか。妖精じゃないのか。先生、一度でいいから妖精を見てみたかったんだ。なんだ、ちがうのか」
先生がそう言うと、今度は教室中が笑い声に包まれた。
「だれか、妖精を見かけたら先生に教えてくれ。さあ、授業に入るぞ。おっと、そうだった。今日はコンピュータルームで授業します。移動開始!」
みんながざわざわと立ち上がって移動し始めたのを見計らって、ダイくんはバッグから飛び出し、わたしのブレザーのポケットに入りこんだ。
「えっ、ついてくる気?」
小声でけげんそうに言うと、ダイくんはだまってうなずいた。しょうがない。もたもたしていたら、また先生に何か言われてしまう。わたしは、待っていてくれたナミちゃんとちひろちゃんの後を追って、コンピュータルームへと急いだ。
「えー、ここではパソコンを使って、さまざまな教科の補足的な授業ができます。数学の場合だと、図形を回転させて立体的にとらえたりするのに使えるかな。あと、ソフトを使って図形を描いたりすることもできます。ただし、通常の授業ではあんまり使いません」
男子から「えーっ、つまんない」とか「先生、ゲームやろう!」などの声が次々と上がっている。
「みなさんは入学したばかりだから、一応こういう学校施設があるということを紹介しておきます。休み時間に使用する場合には、担任の許可が必要です。事前に連絡しないと、鍵がかかっていて入れません」
「今日は、何をするんですか?」
「ゲーム感覚で問題が解けるソフトを使って、小学校の復習問題をやります。早く解けた人から、好きなことに使っていいです。絵を描いてもいいし、インターネットを使って何か調べてもいいし」
みんなはパソコンに向かって、いっせいに問題を解き始めた。いつもは机に置かれたノートやプリントに向かうのに、変な感じだ。問題は正解の番号を選択するものだったので、そんなに難しくなかった。そのため、十五分も経ったころには、たいていの人が問題を終え、先生に教えてもらいながら好きなようにパソコンを使っていた。
わたしは文字を書くソフトを使って、ダイくんとこっそり会話をすることにした。このソフトは、お父さんのパソコンを借りて使ったことがある。幸い、となりの席にはだれも座らなかったし、先生の位置からは、パソコンの画面がじゃましてダイくんが見えなくなっていた。
ダイくんは字を書くことはできないけど、字を読むことはできる。マンガだって読んでるくらいだし。わたしは、ひらがなで入力する方法を選んで、どうやって文字を打っているのかがわかるように、ダイくんに手元をゆっくり見せながら文を書いてみた。
続きは、当月号「ポピー・キーワード」を入れて、読もう
読もう
ちび恐竜と絵留の日々のストーリー
たかはし先生のメッセージ
井上先生のメッセージ