表示がくずれる場合は、ブラウザの[更新こうしん]ボタンをクリックしてください。
POPY Novels ちび恐竜と絵留の日々
Copy Ban
ちび恐竜と絵留の日々(紫の霧の向こうに)
第8話むらさききりの向こうに

作: たかはしみか

絵: 井上恵美

前号までのあらすじ

ちび恐竜きょうりゅうダイくんのルーツをさぐっている絵留えるたち。偶然ぐうぜん見つけた「キョウリュウパーク」。絵留とおばあちゃんは、そこの創設者の息子むすこ佐藤さとうさんに会えることになった。

佐藤さんは、古びた分厚いノートを持ってきて、わたしたちの前に置いた。
「これは、父の遺品です。どうぞ、ご覧ください」

おばあちゃんが手に取って、ゆっくりとめくった。そこには青いボールペンでかかれた文字や絵がびっしりと並んでいた。

佐藤さんは続けた。
「父の話、つまり中型犬くらいの大きさの恐竜がいる島に行ったという話は、だれにも信じてもらえなかったんです。まあ、当たり前でしょう。写真のような証拠しょうこ一切いっさいないんですから。しかも、後からどんなに地図で調べても、そんな島は見当たらなかったそうです」

地図にっていない島。

佐藤さんのお父さんが行ったという島は、うちのおじいちゃんが探していた島と同じなのかもしれない。

そして、ダイくんやその家族、仲間たちは、やはりそこにすんでいたのではないだろうか。
「じゃあ、佐藤さんのお父さんは、どうやってその島に行けたのですか?」

ずっと気になっていたことを聞いてみた。地図になくて、どこにあるかもわからない島に行くことができたなんて、そんな奇跡きせきをどうやって起こしたのだろう。
「そのノートにもあるんですが、近くをボートでただよっているうちに、偶然ぐうぜんたどりついたみたいなんです。しかも、前後の記憶きおくが定かではなく、どうやって島にたどりついたか、また、どうやって島から出てきたかがはっきりしないのです」
「記憶が定かじゃない?」

わたしが聞くと、おばあちゃんがノートのある部分を指さした。そこには、だいたいこのようなことが書いてあった。

佐藤さんのお父さん、佐藤成一せいいちさんは、小型のボートで海をわたっていた。そこは、めずらしい魚がよくれる場所で、ときどきおとずれていたらしい。その日は思うように魚が釣れなかったので、いつもよりも遠くまで船を進ませた。すると、いつの間にか船が紫色の霧に包まれ、視界がすっかりさえぎられて、そのうち気を失ってしまった。気がついたときには、船は見知らぬ砂浜に乗り上げていて、方位磁針もくるっていた。帰りも、めったにない霧の晴れ間をぬって島を出たのはいいが、すぐにまた霧に包まれ、探しにきた人たちに発見されたときには、一週間ほどが経過していた。島にいる間は、一度しか夕陽がしずむのを見ていないというから、島には長くても一日いただけということになる。それでは、合計六日間も船の中でたおれていたことになる。
「それで、無事だったのですか?」

おばあちゃんが聞くと、佐藤さんは首をひねりながら答えた。
「ええ、飲まず食わずで気を失っていたとは信じられないほど、体には何の異変もなかったようです。不思議な話ですよね」

続きは、当月号「ポピー・キーワード」を入れて、読もう

ポピー・キーワードとは?

読もう

ちび恐竜と絵留の日々のストーリー

たかはし先生のメッセージ

井上先生のメッセージ