前号までのあらすじ
年末に見た「ポニー」というバンドの影響で、楽器を始めたくなった奏。同じクラスの奏太にベースを誘われる。しかも奏太の姉が「ポニー」のベースであることがわかった。
「えっ? 奏、『ポニー』を知ってるの?」
奏太が目を丸くして言った。
はっと我に返る。急に立ち上がったりして、なんだか恥ずかしい。すとんと席に戻りながら、年末にたまたま「ポニー」のライブを見たことを話した。あのとき受けた衝撃と感動をうまく言葉にすることはできなかったけど、「ポニー」のライブを見たから楽器を始めてみたくなったということは、なんとか伝えた。
「そうだったんだ。オレもあの時見に行ってたんだよ」
奏太がうれしそうに笑った。お互い、まだ知らなかったのに、同じ空間にいて、同じライブを見てたんだね、と。たしかに、そう考えるとちょっとうれしい。
「今度の土曜さ、『ポニー』が練習する日なんだ。オレも行くから一緒に行こうよ」
勢いよくうなずいたわたしを見て、奏太はまた笑った。
次の日の朝。
「おはよう!」
と、くったくのない笑顔で奏太がわたしの席までやってきた。周囲の視線が気になる。
あの転校生の子、いつのまにか男子と仲良くなってる。そう思われないかな。
そんなちっぽけなことが気になって、わたしの「おはよう」は小さかった。
「どうしたの?」
「べつに」
「そう? あ、これ。昨日話したアラスカンマラミュートのCD。聴いてみて」
わたしの心配をよそに、奏太は無邪気な顔でCDを差し出した。
「あ、ありがとう」
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