前号までのあらすじ
憧れのバンド「ポニー」の練習を見に行った奏は、自分もベースを始めたいと強く思った。帰り道、偶然見かけたハルカを呼び止めると、彼女の目から涙がぽろりとこぼれ落ちた。
「奏……」
ハルカはわたしの姿を見ると、一瞬笑顔になったが、それはすぐにくずれて再び泣き顔になった。
どうしたの?
と聞けずにとまどっていると、ハルカはわたしに抱きついてきて、それからしばらく声をあげて泣いた。事情は全くつかめないけど、ハルカの痛い気持ちがわたしにまで刺さるようで、鼻の奥がつんとした。
「ごめんね。いきなり」
わたしからそっと離れると、ハルカはポケットからティッシュを出して、鼻を何回もかんだ。かみ方が女子とは思えないほど豪快すぎて、やっと二人で笑った。
「奏、まだ帰らなくても大丈夫?」
「うん。夕飯までに帰れば平気」
「じゃあ、ちょっとつきあって」
わたしたちは、にぎやかな駅前からちょっと離れたところにある公園へ行くことにした。
自販機の前でハルカが
「コーヒー飲める?」
と聞いてきた。
「甘いのなら」
そう答えると、ハルカはカバンから財布を取り出して、ホットのカフェオレを二本買い、一本をわたしに差し出した。
「さっきのお礼とおわび」
「そんな、いいのに」
「いいの。一緒にコーヒー飲んでほしかったの。大人みたいでしょ」
ハルカっておもしろいこと言うな。わたしは、じゃあ遠慮なく、と大人みたいに言い返してから受け取った。
公園のベンチで缶コーヒーを飲むわたしたちは、どう考えても大人みたいではなかったけれど。
「早く大人になりたいの?」
春とはいえ、夕方の空気はまだ冷たい。カフェオレのあったかい甘さにいやされながら、わたしは聞いた。
「なりたい。今すぐ!」
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