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POPY Novels 魔法使いのステージ
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魔法使いのステージ(交渉)
第3話交渉こうしょう

作: たかはしみか

絵: 井上恵美

前号までのあらすじ

あこがれのバンド「ポニー」の練習を見に行ったかなは、自分もベースを始めたいと強く思った。帰り道、偶然見かけたハルカを呼び止めると、彼女かのじょの目からなみだがぽろりとこぼれ落ちた。

「奏……」

ハルカはわたしの姿を見ると、一瞬笑顔いっしゅんえがおになったが、それはすぐにくずれて再び泣き顔になった。

どうしたの?
と聞けずにとまどっていると、ハルカはわたしにきついてきて、それからしばらく声をあげて泣いた。事情は全くつかめないけど、ハルカの痛い気持ちがわたしにまでさるようで、鼻の奥がつんとした。
「ごめんね。いきなり」

わたしからそっとはなれると、ハルカはポケットからティッシュを出して、鼻を何回もかんだ。かみ方が女子とは思えないほど豪快ごうかいすぎて、やっと二人で笑った。
「奏、まだ帰らなくても大丈夫だいじょうぶ?」
「うん。夕飯までに帰れば平気」
「じゃあ、ちょっとつきあって」

わたしたちは、にぎやかな駅前からちょっとはなれたところにある公園へ行くことにした。

自販機の前でハルカが
「コーヒー飲める?」
と聞いてきた。
「甘いのなら」

そう答えると、ハルカはカバンから財布さいふを取り出して、ホットのカフェオレを二本買い、一本をわたしに差し出した。
「さっきのお礼とおわび」
「そんな、いいのに」
「いいの。一緒いっしょにコーヒー飲んでほしかったの。大人みたいでしょ」

ハルカっておもしろいこと言うな。わたしは、じゃあ遠慮えんりょなく、と大人みたいに言い返してから受け取った。

公園のベンチでかんコーヒーを飲むわたしたちは、どう考えても大人みたいではなかったけれど。
「早く大人になりたいの?」

春とはいえ、夕方の空気はまだ冷たい。カフェオレのあったかいあまさにいやされながら、わたしは聞いた。
「なりたい。今すぐ!」

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