
【小児歯科専門医監修】子どもの口腔機能を育てる方法
子どもの歯と口腔ケアガイド
子どもの「食べる・話す・鼻で息をする力」を育てる口腔機能の気になるサインや、家庭でできるお口のトレーニングを解説します。
目次
「口がぽかんと開いている」「食べ方や発音が気になる」そんな様子は口腔機能発達不全症のサインもしれません。口腔機能は、歯並びや噛み合わせだけでなく、食事・会話・呼吸など毎日の生活にも関わります。幼児期から正しい口の使い方を身につけることで、お口の健康と子どもの健やかな成長を支えることにつながります。
この記事では、口腔機能が発達する流れ、家庭で確認できるチェックシート、「食べる力」「息をする力」「話す力」を育てるポイント、歯科医院で受けられるサポートや口腔機能トレーニングをわかりやすく紹介します。

坂部 潤 先生
都内5つの医院の運営責任者と矯正治療の管理などを行う小児歯科専門医。大学病院での小児
歯科専門医療の実践や米国UCLA小児矯正科への留学経験、また4児の父親としての経験を
生かし、継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。
子どもの口腔機能とは?発達の流れと大切な理由
子どもの口腔機能とは、食べ物を噛む・のみ込む、言葉を発音する、鼻で呼吸するなど、お口まわりの働きのことです。食べる、息をする、話すといった口腔機能は、生まれつき備わっているものではなく、成長とともに少しずつ発達します。赤ちゃんはまず母乳やミルクを飲むことからスタートします。そして、離乳食を食べる→噛む→のみ込む→鼻で呼吸する→言葉を話す、といった機能が少しずつ発達していきます。
乳歯が生えそろい、食事や会話などで口の使い方が安定してくる3歳ごろは大きな節目。のみ込み方や口の閉じ方、呼吸の仕方なども、このころにはある程度定着してきます。個人差や発達途中の部分がある程度落ち着き、気になる癖や機能の特徴が見えてくるのもこの時期です。3歳ごろを目安に、お子さんの口腔機能が正しく発達しているかを、確認するようにしましょう。
子どもの歯並びや噛み合わせは、前回の連載でも触れた通り、遺伝だけでなく、口や顎の周りの筋肉と歯の大きさのバランスや、生活習慣などが複雑に関係しています。正しく口腔機能を使い、バランスよく口や顎の周りの筋肉を発達させることが、きれいな歯並び・嚙み合わせ、ひいては健康につながります。
口腔機能チェックシート|食べ方・話し方・口呼吸のサインを確認
下記に口腔機能を正しく使えているかのチェックシートをご用意しました。お子さんの様子を確認するのに、ご活用ください。
子どもの「食べる力」を育てるポイント
子どもの「食べる力」を育てるには、年齢にあった食事を経験しながら、お口全体をしっかり使うことが大切です。大切なのは「たくさん噛むこと」だけではなく、くちびるを閉じて噛み、舌を上手に使ってのみ込むという一連の動きを自然にできるようになることです。
そのためには、離乳食から幼児食へと段階に応じて食材の硬さや大きさを少しずつ変え、お口を使う経験を積み重ねていくことが重要です。また、足裏が床につく姿勢で座り、前かがみになりすぎず食べることも、噛む・のみ込む動作を安定させます。
毎日の食事は、お腹を満たすだけでなく、お口の機能を育てる大切なトレーニングの時間でもあるのです。
子どもの「息をする力」を育てる|口呼吸から鼻呼吸へ
特に重要なのは「安静時の状態」です。安静時に下記の状態になっているようにしましょう。
- 唇が自然に閉じている
- 鼻で呼吸している
- 舌が上あごについている
普段からテレビを見ているときやあそんでいるときなど、何気ない場面でお子さんのお口の様子を見てあげましょう。もし口が空いていることが多い場合は「口を閉じなさい」と注意するだけでは改善しないこともあります。
アレルギーや鼻づまり、扁桃腺の状態などが影響していることも。このような場合は歯科だけでなく耳鼻科との連携が必要なケースもあります。
子どもの「話す力」を育てる|発音と舌・唇の使い方
話す力も、口腔機能と深く関わっています。発音が不明瞭、言葉が聞き取りにくいなどの特徴が見られるときには、舌や唇を上手に使えていない可能性があります。
とはいえ、発音の発達にも個人差があるため、幼児期は過度に心配する必要はありません。しかし、成長しても発音が不明瞭な状態が続いたり、保育園や幼稚園で指摘を受けたりした場合は、一度歯科医院などで相談してみると安心です。
お口の機能が整うことで、発音だけでなく、食べることや呼吸など、毎日の生活にもよい影響が期待できます。
歯科医院でできる口腔機能チェックとお口のトレーニング

歯科医院というと、「虫歯を治す場所」というイメージがあるかもしれません。
しかし最近は、歯だけでなく、
- 食べ方
- のみ込み方
- 呼吸
- 舌や唇の動き
など口腔機能全般を確認してくれる歯科医院も増えてきています。
実際には、
- 唇の力(口を閉じる力=口唇圧)
- 舌の力(舌圧)
- 舌の位置
などをチェックし、必要に応じて簡単なトレーニングを行うこともあります。あそび感覚で取り組めるトレーニングもあり、3歳ころから始めることができます。
下記にトレーニングの例を紹介しますので、先のチェックシートでお子さんの様子で気になるところが多かくあった場合は、やってみてください。
唇の力を鍛えるトレーニングの例
【吹き戻し(ピロピロ笛)】
笛を唇にくわえて鼻から息を吹きます。次に、鼻から2秒かけて吸って、勢いよく吹きます。吹いた状態でそのまま3秒間キープします。吹き戻しには、強く吹かないと伸びない「口腔機能訓練用」のものもあります。使用については、歯科医師に相談すると安心です。

吹き戻しで遊びながら唇の力を鍛えると、口をしっかり閉じる力が育ちます。口を閉じて食べたり、鼻で呼吸したりしやすくなり、口の機能の発達につながります。
正しい舌の位置

舌の力を鍛えるトレーニングの例
【ポッピング】

あそびながら舌の力を鍛え、下を正しい位置(上あご)に保つ練習ができます。飲み込みや鼻呼吸をしやすくし、お口の機能の発達につながります。
まとめ
虫歯予防から始まり、歯並び、そして口腔機能へ――。
3回にわたって紹介してきたように、口の健康は単に「虫歯がないこと」だけではありません。
食べること、話すこと、呼吸すること。そうした毎日の当たり前の動作は、子どもの成長を支える大切な力です。
「口が開いていることが多い」「食べ方が気になる」など、小さなサインに気づいたら、まずはかかりつけの歯科医院に相談してみましょう。
早めに専門家とつながることが、お子さんの口腔機能の発達と健康を支えます。
取材・文/那須由枝 編集協力/東京通信社 イラスト/yana
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