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子育て世代必見!【元校長先生が聞く 気になる 子どもの姿勢 後編】

子育て世代必見!【元校長先生が聞く 気になる 子どもの姿勢 後編】

元校長先生が聞く ○○のハナシ

対談第2回

第2回 「子どもと姿勢研究所」代表/理学療法士 西村 猛さん
× 元東京都公立小学校校長 菊井道子先生

「ポピー教育対話主事」の先生方が、様々な分野で活躍中の方をインタビューするこの企画。引き続き後編では、菊井道子先生が、子どもたちの姿勢を悪くする原因と改善方法、その際の親の役割についてお聞きします。

西村 猛(にしむら・たけし)さん(「子どもと姿勢研究所」代表/理学療法士)

西村 猛(にしむら・たけし)さん(「子どもと姿勢研究所」代表/理学療法士)

20数年間公務員理学療法士として小児理学療法業務などに従事した後、2017年に独立起業。現在は、会社代表として発達障害のあるお子さんの通所事業所を経営。
全国の保育園・幼稚園・こども園などで、子どもの姿勢改善や運動発達に関する研修会講師として活躍中。また子どもの運動発達の専門家として、NHKあさイチをはじめ、テレビ、新聞、雑誌等の各メディアへの出演・取材多数。YouTubeチャンネル「こども発達LABO.」では、言語聴覚士の妻と二人で、言葉と体の発達や発達障害に関する情報を発信中。著書に『寝る前10秒 子どもの姿勢ピン! ポーズ』(主婦の友社)などがある。

菊井道子(きくい・みちこ)先生 (ポピー教育対話主事)

菊井道子(きくい・みちこ)先生 (ポピー教育対話主事)

東京都出身。東京学芸大学卒業。小学校教員として17年にわたり児童、保護者と関わる。また、東京都教育委員会 指導主事として教職員の資質・能力向上を支援。2005年より小学校校長として学校経営を担う。専門は体育。
2020年4月より全家研ポピー教育対話主事に就任。学び続ける探究心を忘れず、子育て世代に向けた有用な情報発信に全力を注ぐ。

【前編】はこちら

悪い姿勢は外遊びでリセット

菊井:子どもの姿勢を悪化させる原因をお聞きしたいと思います。

西村:私が考える主な原因は、①外遊びの機会の減少 ②器械運動をする機会の減少 ③ポータブルゲーム機の浸透 ④日常的なソファー生活 ⑤親の姿勢の崩れ ⑥低緊張タイプの子の増加の6つです。

菊井外遊びする子どもは減っていると感じますが、それがどう姿勢に影響するのですか。

西村:特に公園での遊具遊びが、良い姿勢に重要な体幹の筋力や背骨の柔軟性などを高めてくれるんです。

ジャングルジムではくぐる時に体を曲げるので背骨の柔軟性が、ブランコではバランス感覚や体幹筋の持久力がアップします。

とはいえ、体幹筋の持久力や背骨の柔軟性を上げようとそこばかり動かすより、いろいろな遊具で体をまんべんなく動かし、全体的な底上げを図るほうが効果的です。

また、そうした外遊びによって姿勢の悪さが「相殺」される効果も期待できるんです。

菊井体をまんべんなく動かすことで悪い姿勢が相殺されるとは驚きです。

西村:人間誰しも姿勢が悪くなる瞬間ってありますよね。問題は、その時間が続いて「習慣化」されてしまうことなんです。

例えば、巻き肩の人が1日に数回、肩を開いて胸を反らすだけでも習慣化は避けられます。外遊びは、普段の悪い姿勢を相殺してくれる機会でもあるんです。

ゲーム機以上に影響があるもの

菊井:2つ目の「器械運動をする機会の減少」も同じ理由ですね。

西村:その通りです。昔より鉄棒やマット運動の機会が減ったため、体全体を使うことで姿勢の悪さを相殺する機会が減っています。

3つ目のポータブルゲーム機は、手元で操作するため首を垂らした状態が続き、やがて猫背につながります。そして、猫背になると、背骨は本来のS字カーブではなく「C」の字になってしまいます。

背骨が「C」の字になった姿勢

さらにCの字になると呼吸機能が育たないなど、健康面にも悪影響を及ぼすことがあります。せめて、テレビ画面でゲームをすれば首がそこまで下がりません。

菊井:4つ目の「ソファー生活」ですが、ゲーム機以上にソファーは日常的なものです。どういう点が問題なのでしょうか。

西村:背筋を伸ばすと骨盤は縦に起きます。でも、ソファーに座るとおしりが沈むため、どうしても骨盤が後ろに倒れます。骨盤が後ろに倒れると、背骨はCの字になりやすくなります。これが習慣化すると姿勢が悪くなるんです。

姿勢のためには、できれば床に座ってソファーの前面を背もたれにするか、高反発タイプのソファーに変えることをお勧めします。

菊井:5つ目の「親の姿勢」については前回もふれましたね。

西村親が猫背のまま注意しても説得力がないとお話ししました。それに加えて、脳内にある「ものまね細胞(ミラーニューロン)」が悪影響を及ぼすんです。

この細胞は、目にした動きを無意識にコピーする働きがあります。普段の親の姿勢をコピーしてしまうため、親の姿勢の崩れも原因の一つになるんです。

菊井:なるほど、だから私たち大人が姿勢をよくすることが子どもの姿勢改善につながるのですね。

西村:最後に6つ目の「低緊張」ですが、ここでの緊張とは筋肉の「ハリ」のことで、低緊張タイプのお子さんは全身的に筋肉のハリが緩い状態です。風船にたとえると空気がいっぱいに入った状態ではなく、少し空気が抜けたイメージです。そのため、姿勢を安定させるための体幹筋も低緊張の影響を受け、姿勢が崩れやすくなる傾向があります。

菊井:筋肉のハリがなくなるのは、運動の機会が減ったためですか。

西村:いえ、筋肉のハリ具合は脳からの指令で決まります。これには個人差があり、「ハリはあるけれど緩いハリの状態=低緊張」という、もともと持って生まれた特徴も影響しています。

ですので、姿勢が悪い子を一概に「やる気がない」「態度が悪い」と決めつけつるのは危険です。

また、低緊張の子は運動が苦手で、家で過ごすことを好む傾向があるので、外遊びを強制することも避けてほしいですね。

一緒にどうですか?

菊井:では、親御さんができることってなんでしょうか。

西村親も一緒に外へ出て遊ぶんです。公園で遊んでもいいし、昔の遊びを教えてあげるのもいいですね。

「だるまさんがころんだ」なんかは「動いて→止まる」を繰り返すので、体幹筋が鍛えられます。同時に、視覚や聴覚も使う遊びなので、姿勢に重要な「自分の体をイメージ通りにコントロールする能力」を高められます。

そういう意味では、毎日の中で転んだり滑ったりする経験も大切なんです。転ぶ瞬間の傾いた感覚や人とぶつかった時の距離感などは、ボディイメージの形成につながります。ボディイメージをつかめている子どもは、体のコントロールが上手なので、姿勢の改善もしやすい傾向があります。

菊井親の役割は、子どもと一緒に遊びつつ、転んだり滑ったりという失敗をできるだけ許容して見守ることなんですね。

西村:おっしゃる通りです。ぜひ、失敗も成功も経験できる環境を整えてあげて、それぞれから得られる感覚を学ばせてあげてください。

そして何よりも、親自身が楽しむことで、子どもを巻き込みながら姿勢の改善を進めていってもらえたらうれしいです!

菊井:子どもの姿勢改善だけでなく、新しい知識や気づきを得ることができました。ありがとうございました。

西村さんの温かな語り口に、心も体もすぐに解きほぐれた菊井先生。

西村さんの魔法の帽子を一緒にかぶり、ステキな時間をしめくくりました。

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