子育て世代必見!【親子で楽しむ工作の極意! 前編】
元校長先生が聞く ○○のハナシ
対談第5回
第5回 工作の伝道師「わくわくさん」こと、久保田雅人さん
× 元東京都公立小学校校長 山田正樹先生
この連載では、ポピーで長年子育ての悩みに寄り添ってきた「ポピー教育対話主事」の先生方が、様々な分野で活躍中の方へインタビューします。第5回目の対話主事は、山田正樹先生です。そして、今回お話を伺ったのは、NHKの子ども向け工作番組『つくってあそぼ』に「わくわくさん」として出演されていた久保田雅人さん。
長い間、子ども向けの工作を手がけてきた久保田さんに、親子で工作を楽しむコツや工作が親子関係に与える効果などをお聞きしました。
久保田 雅人(くぼた・まさと)さん(工作の伝道師)
1961年東京に生まれる。立正大学卒業。同大在学中に中学・高校の教員免許(社会科)を取得するが、役者の道に進む。
1990年4月から、NHK教育テレビ(当時)の幼稚園・保育所向け造形番組「つくってあそぼ」に、「わくわくさん」役として出演。同番組は学校利用率80%、さらに一般視聴率10%以上と名実ともに人気番組へと成長を続け、それにあわせるように、「わくわくさん」も「赤い帽子に丸めがね、工作上手なお兄さん」として子どもたちの人気を集めている。特技は、落語。趣味は、読書(歴史もの)と旅行。
山田正樹(やまだ・まさき)先生 (ポピー教育対話主事)
東京都出身。東京学芸大学卒業。小学校教員として40年間にわたり子どもたちとかかわる。小平市で副校長・校長として学校経営も 行う 。専門は算数教育。ICT機器の教育への利活用にも積極的に取り組む。令和3年4月より、全家研 ポピー 教育対話主事に就任。インスタライブや動画での情報発信、教育講演会など活躍中。
プラモデル好きの子どもが「わくわくさん」に
山田正樹先生(以下、山田):NHKの工作番組には、何年出演されていましたか。
久保田雅人さん(以下、久保田):1990年4月から2013年の3月まで、23年間出演していました。終了して11年が経つ今も再放送されていますし、YouTubeでも「わくわくさんの工作教室」を配信しているので、工作イベントなどでは3代にわたって「わくわくさん」に親しんでくださっている方とお会いすることもあるんです。
山田:やはり、子どもの頃から工作など、ものを作ることがお好きだったのでしょうか。
久保田:確かに工作は好きでしたね。幼稚園の頃から当時ブームだったプラモデルを作っていて、中学生になると戦闘機のプラモデルを改造して楽しんでいました。
山田:私もよく作りましたが、改造まではとても。そうして作ったものをご両親にほめてもらうことも?
久保田:いえ、まったく(笑)。そんなこと、一度もありませんよ。ただ、工作をするには最適な家庭環境ではありました。
というのも、父が今でいうDIY好きな器用な人で、家には何十種類ものノコギリやノミがあったんです。その道具の一部を借りて、作ったり改造したりしていましたね。
山田:そうした環境で育った久保田さんが、工作番組に出演するに至った経緯を教えてください。
久保田:実は私、教員を目指してたんですが、教育実習で挫折しまして。どうしたもんかと悩んでいるときに、偶然手にした雑誌に載っていた、声優の三ツ矢雄二さんと田中真弓さんの劇団の募集広告を見て、ふらふらっと応募してしまったんです(笑)。昔から落語好きで、人前でしゃべるのも好きでしたからねえ。
山田:その劇団に入ったことが、わくわくさんの誕生につながるんですね。
久保田:入団して5年目ぐらいに田中さんの紹介でNHKのプロデューサーと会ったんです。
当時、放送されていた工作番組『できるかな』が終了するため、新しい工作番組の出演者を探していたんです。劇団では大道具も小道具も担当していましたから、声がかかったのかなと。
同じ目線で「思い出作り」
山田:テレビ番組で工作を披露することは、やはり勝手が違いましたか。
久保田:自分で作るときは自分さえ楽しければOKですが、番組は子どもたちが観ていて楽しめないといけません。
加えて、観終わったときに自分でも「作ってみよう!」と、創作意欲を引き出すことが肝心です。その一番のコツは、作っている私自身が本気で楽しむことです。
だから番組中、相棒のゴロリくんと勝負をするときは、真剣勝負でしたよ。段取りで演じると、子どもにはすぐバレますから。
ただ同時に、作る工程は子どもでも理解できる丁寧な説明が必要です。例えば、切る・貼る・塗るなどの基本作業は特にわかりやすく伝えていました。
山田:基本作業をわかりやすく伝える際は、どのような工夫をされていましたか。
久保田:基本的な作業って、動きが地味なんです。それを真顔でやったら、ちっとも面白くありません。だから、セロテープで貼るときなんかは「ペッタペッタ〜♪ ここをはみ出さないように〜気をつけて! ほらっここだよ〜、こうするといいんだよなぁ〜」といった感じで、とにかく楽しく観てもらえるように心がけていました。
山田:お見事です。まるで歌うように抑揚をつけて説明するんですね。そうした見せ方は、ご家庭で工作を楽しむときのヒントにもなりますね。
久保田:そうですね。ご家庭で工作をするときは「やりなさい」「作ってみなさい」ではなく、親御さんも子どもと同じ目線で、一緒に楽しんでほしいですね。
山田:私も校長時代、児童の心を早くつかむには「一緒に遊ぶのがいちばん」と若手教員にアドバイスしていました。一緒に遊ぶことで先生と児童の距離がグッと縮まりますからね。
久保田:親子も一緒ですね。親・子という縦の関係ではなく、一緒に遊ぶ横の関係性が工作を楽しむときにも大切です。
それと、一緒に工作していると「こんなことできたんだ」とか「これは苦手なのね」と、お子さんの成長を感じられるはずです。
そういう意味では、工作って「思い出作り」なんですよね。完成した「作品」も、作っている「時間」も、親子にとって貴重な思い出になると思いますよ。
山田:とても素敵なお考えですね。では、後編は親子で工作に取り組むときに、親が心がけたいことなどを伺いたいと思います。
いかがでしたか? 引き続き後編では、親が子どもと一緒に工作に取り組む際、どういう意識で関わるとよいのかお聞きします。