
体を動かす=運動系の子どもの習いごとの選び方
みんなの習いごと事情
幼児期に身につけておきたい運動神経を発達させる動きや、運動系の習いごとの選び方やポイントについて、専門家のお話をご紹介!
幼児の習いごとしても人気が高い運動系の習いごと。体を動かすことを好きになり、運動神経を伸ばすために、この時期の子どもたちに必要な運動環境や体育指導について、小出先生にお話をうかがいました。

小出 史比古(こいで ふみひこ)先生
愛知県出身、日本体育大学卒。大学卒業後は体育指導者として都内の幼児体育会社に7年在籍。その後、有限会社ムックの幼児体育を設立し現在に至る。幼稚園や保育園への体育指導者派遣事業の他、体育・水泳・サッカー・ダンスクラブの運営、キャンプ・スキー・スケート・忍者遠足等の野外活動運営、幼稚園や保育士会の幼児体育研修(理論・実践)、海外幼稚園への幼児体育導入および、研修などを中心に活動。
幼児期の運動習慣ってどうして大事なの?

運動することで脳が発達し、体が成長する
脳がまだ発達途中の幼児期は、体を動かしてその経験値を脳に蓄積していく段階にあります。自由に体を動かしながらたくさんの動きをまなぶことで脳が発達し、体内の神経回路が広がっていくのです。
また、幼児期は心肺機能もまだ未熟なため、体を動かすことで、全身がポンプのような役割を果たし、手足の末端まで血流がいきわります。血流が促進されると、体温が上昇して気分もよくなり、さらに体を動かすことが楽しくなる、という好循環が起こります。
運動をすることで脳が発達し、運動神経が育ち、さらに体が発達していくのがこの時期の子どもたちです。このように、幼児期の脳と体の発達は相互に密接に関連しています。筋力や骨、脳が成長していくと、さらに高度な思考や複雑な情報処理を伴う幅広い動きが可能となります。1~2歳頃は、個々であそんでいたものが保育園や幼稚園などの環境に順応し、成長するにつれてあそびや運動のルールを覚えて、より複雑な動きを組み合わせた運動ができるようになっていくのです。
子どもは疲れ知らずって本当?
いつまでも走り回るお子さんを見て「小さな体のどこに、こんなパワーが…」と思っているパパ・ママも少なくないでしょう。激しい運動をした翌日に筋肉痛を起こしたり、子どものペースに合わせてあそんで疲れ切ってしまったりする大人の体とは異なり、子どもの体は乳酸を作る機能が未熟なため疲れることなく動き続けられます。たくさん動くことが成長・発達につながるので、運動することが生理的に保障されているステージなのです。
“体を動かす楽しさ”をたくさん感じさせてあげよう
幼児期に身につけておきたい運動神経を発達させる動きは?
幼児期に身につけておきたい運動神経を発達させる動きには、どのようなものがあるでしょうか? 大きくは、下記の3つでです。
【バランスをとる】 立つ、座る、寝ころぶ、起きる、回る、転がる、渡る、ぶら下がるなど
【移動する】 歩く、走る、はねる、跳ぶ、登る、下りる、這(は)う、よける、すべるなど
【(道具などを)操作する】 持つ、運ぶ、投げる、捕る、転がす、蹴る、積む、こぐ、掘る、押す、引くなど
3つの動きをバランスよく発達させることで、以下の図に示されているようなさまざまな動作やスポーツができるようになります。

どうすればいい? 運動系の習いごとの選び方・ポイント
“できない”→「嫌い!」を作らない
幼児期(~6歳程度)までは1つのスポーツに絞って練習を積むよりも、多様な体の動きを体験して運動の楽しさを感じられるような環境が理想的です。また、子ども自らが「できる!」「どんどんやりたい!」と感じることが大切なので、ほめて、認めてあげるような体育指導が重要になります。そのため、「同じ動きをくり返す(=反復練習)」や「運動を評価につなげる(=級の合格を目指す)」ということは望ましくありません。これらは運動技能の習得や上達には欠かせない要素ではありますが、脳の発達や神経・身体機能が十分に発達してから(9歳くらいが適齢といわれます)行うことで効果を発揮するものです。幼児期はその手前の段階のため、「“上手じゃない”、“できない”=嫌い」という運動への苦手意識を植えつけてしまうことになります。幼児期の子どもたちの心と体の発達を大切に扱いながら、運動好きになるように温かく見守ることが大切です。
ポイントは“多様な動き”と“いろいろな道具”
運動系の習いごとを選ぶ際は、「あそび感覚であらゆる体の動きを取り入れた体育指導を行っているかどうか」をポイントにするとよいでしょう。たとえば、サッカーなら、足でボールを蹴るだけでなく、手でボールを挟んで運ぶあそびや、おしりでボールに座る、転がるボールを頭で止める動きなど、全身を使ってボールを扱う動きなど、スイミングであれば、すべり台や浮き輪などを使って、いろいろな形で水に入るあそびや、ボールなどを使った水中あそび、体操や新体操なら、鉄棒やとび箱、マットなどを使った動きや、ボールを転がすあそび、フープを使ったけんけんあそびなどを体験できると、子どもたちは多くの異なる道具を使ってさまざまな動きを楽しめますし、好奇心を満たすことができます。
それぞれのスポーツ特有の動きや練習の導入として、幼児期の発達と多様な動きの必要性を意識したアプローチをカリキュラムにとりいれた指導をおこなっている教室を選ぶのがおすすめです。
まとめ
「運動神経のよい子に育てたい」とか、「将来はスポーツ選手になってほしい」など、多くのパパやママが子どもの可能性を最大限に伸ばしてあげたいと願うのは自然なことです。そのためには、幼児期の心と体の発達を理解して、スポーツを楽しめる土台を作ってあげることを考えてみましょう。また普段の生活の中でも、お散歩をするときに石だたみを片足けんけんで移動してみたり、公園の遊具を使って鉄棒にぶら下がったり、すべり台ですべったり、ブランコをこぐなど、いろいろな動きをするあそびを見つけて体を動かす楽しさを感じさせてあげるのもおすすめです。
取材・文/遠藤祥子 編集協力/東京通信社