
「こころとからだの跳躍力」を育てる。誠お兄さんが子どもたちと描く未来の色
インタビュー 子育てサプリメント
福尾誠さんに、こころとからだの跳躍力を育てるために大切なことや、最近の活動についてお話をうかがいました。
目次
NHK Eテレ『おかあさんといっしょ』で「体操のお兄さん」として4年間、子どもたちと全力で向き合ってきた、福尾誠さん。番組卒業後、新たに立ち上げたのが、遊びとスポーツとデザインを融合させたプロジェクト「coseiro(こせいろ)」です。
福尾さんが今、「個性を彩る」ことに情熱を注ぐのはなぜでしょうか。原点には、かつての体操少年が抱いた小さな違和感と、多くの子どもたちと過ごす中で見つけた、未来を切り拓くためのエネルギーがありました。

福尾 誠 (ふくお・まこと)さん (スポーツライフスタイリスト)/博士(スポーツ健康科学)
1992年1月11日生まれ、東京都出身。幼少期から体操競技を始め、大学卒業まで選手として活躍。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士課程修了、博士号取得。2019年4月より、NHK Eテレ『おかあさんといっしょ』第12代体操のお兄さんとして4年間活動。2023年4月をもって同番組を卒業。coseiro代表、クリエイティブディレクター。
直筆サイン色紙プレゼントフォームは、記事の最後にあります。
教科書のモデルにもなった体操少年! 福尾 誠さんの子ども時代
小さいときから体を動かすのが好きで、小学校での得意科目も、もちろん「体育」。体操教室に通っていたこともあって、マット、跳び箱、鉄棒は大得意でした。
体操教室に通い始めたのは2歳半のころ
まだ小さかった僕は、先に体操教室に入っていた姉の送迎をする母についていって、教室の中をあちこち見回って遊んでいました。その様子を見た教室の先生から「そんなに運動するのが好きだったら、お姉ちゃんと一緒にやってみる?」と声をかけてもらったのが始まりです。
小学生で教科書のモデルに
教室には、習い事に行くというよりも、遊びに行くという感覚でしたね。とにかく、運動することが楽しくて仕方ありませんでした。
当時のエピソードとして、小学校の「体育」の教科書のモデルになったことがあります。体操教室に撮影モデルの依頼が来て、「誰か行ける人?」と募集があり、僕が手を挙げました。体操する動画を撮影される経験はありましたけど、連続写真を撮られるのは初めてだったので、面白かったですね。
僕が通う学校では、その教科書は採用されませんでしたけど(笑)。
体操以外にも、水泳、ミニバスケットボール、サッカーと、いろいろなスポーツをやっていました。当時を振り返ると、忙しかったですね。習い事だけではなく、遊びの時間は全力で遊ばなきゃ気が済まないので(笑)。 体操教室は、最初は週に2〜3回くらいでしたが、学年が上がるにつれて週4回、中学生になると週5〜6回と増え、種目数も増えていきました。

「比べられること」で「楽しさ」が遠のいた。競技会で感じたギャップ
体操教室は、自分の体をいろんなふうに動かして探究していく面白さや、できなかったことができるようになる嬉しさを感じながら、夢中になって続けていました。
だけど、小学4年生頃から競技会に参加するようになって、状況が一変しました。
それまで、体を動かす遊びのような感覚でやっていた体操が、大会のために技を構成し、練習を積み重ねてつくりあげる「競技」に変わっていきました。
体操は個人競技なので、練習してできるようになった技を披露できる喜びがあります。
でも競技会では、自分の喜びよりも順位が重視されます。「見て、こんな技ができるよ」という気持ちで大会に参加しているのに、終わってみたら「はい、キミは○位ね」とジャッジされるんです。
参加し始めた当初は、「そう? 僕は一位だったけどね、楽しかったから」なんて思っていましたね。
スポーツを純粋に楽しんでいたのに、競技会に参加したとたん、他の人と比較され、順位を付けられる。アスリートになる前の僕はそのことに大きなギャップを感じました。 でもその後、どうしても金メダルが欲しくてオリンピックを目指すことにもなるんですけどね(笑)。

「こころとからだの跳躍力」を育て、子どもの夢を応援したい
今僕は、「coseiro(こせいろ)」という会社を立ち上げて活動をしています。
coseiroは、個性(cosei)を彩る(iro)、をかけあわせた造語です。名前の通り、「子どもたちの個性を彩りたい」という思いで始めました。
そう思うようになった背景には、今、社会で進んでいるデジタル化がもつ課題があります。
便利さの一方で失われるもの
今の世の中は、デジタル化やAIによる情報が増える一方、自分の体を使って体験する機会が減っていると感じています。デジタル化やAIによって便利になること自体は、悪いことではありません。ですが、自分の個性を見失ったり、「好き」「楽しい」「嬉しい」と夢中になれることに触れる機会が減っているんじゃないか。僕はそういう危機感をもっています。
子どもたちが個性を自由に表現しながら未来へ飛びだして行ける、カラフルで可能性にあふれた社会を創りたい。その一心で、活動を始めました。
coseiroの活動内容
「こころとからだの跳躍力」ってなんだろう?
さきほどもふれましたが、僕がcoseiroの活動を通して育てたいのは、「こころとからだの跳躍力」です。
体操を専門とする僕が「跳躍力」と言うと、「めちゃくちゃジャンプできる力のこと?」と思われるかもしれません。もちろん、物理的なジャンプ力を上げる指導もできます。でも僕はそれだけではなくて、心のジャンプ力も上げることを目指しているんです。
未来に大きくジャンプする土台づくりが大切
好きなことを体験すると、「楽しい!」「嬉しい!」「ワクワクする!」という気持ちがわき上がってきて、心が弾みますよね。僕はこのエネルギーこそが「こころの跳躍力」の中心だと思っています。この力は、理屈ではなく、自分自身が体験して得た実体験からしか生まれないものです。
僕は子どものときに体をたくさん動かして、思い通りに体を動かせる楽しさや、難しい技をクリアしたときの「よし!」という手応えを何度も体験しました。
この手応えは、やがて「自信」に変わります。すると、自分が成長し大人になっていくことや、その先の未来に対して、自然とワクワクする気持ちや期待感が生まれていく。そして、未来に大きくジャンプする土台になり、困難に立ち向かう忍耐力にもなるのです。
遊べば遊ぶほど、人生のエネルギーになる
遊ぶことは、とても大切です。子どもにとっては、遊びの中に全てがあると思っています。学びも、体験も、人との関わりも、人間形成も、全部遊びの中に詰まっている。
僕は、人生においては「より遊んだ子どもが強い」と思っているんですよ。
遊べば遊ぶほど、子どもは楽しむことを覚えていきます。楽しむことで体が弾み、心も弾む。こころの跳躍力が高まるんです。
この力を養うことで、それぞれの得意な部分「個性」を伸ばし、人に誇れる大人になってほしい。それが僕らの願いです。

子どもの「違い」を楽しむ。個性を尊重する子育てとは
学校の授業や習い事って、どうしても全体を同じところまで引き上げることが目標になりがちですよね。でも僕が子どもたちに教えるときは、全体の基準を気にするよりも、一人ひとりを見るようにしていました。
子どもたちがやれることは一人ひとり違うので、その子に合ったやり方を一緒に探すようにしていたんです。
同じきょうだいでも、全然違う個性をもっている
体操教室に通っていた僕と姉の話をしましょう。僕も姉も、競技会では多くの結果を残せました。僕は同じことを何度も繰り返しコツコツやるのが好きなタイプです。いっぽう、姉は自分のペースで練習をし、休みたい時は休む。だけど、試合に行くと金メダルを取って帰ってくるんです。これがいわゆる「天才なのか」というふうに。
一人ひとりの個性があるから面白い
こんなふうに、同じ環境に育っても、個人によってアプローチも結果も異なってくる。保護者の方には、その良し悪しを比べるのではなく、「なるほど、こういうふうにきたか」と、その子独自の面白さとして、一緒に楽しんでほしいんですよね。
以前の僕のように、アスリートとして、オリンピックを目指して世界でたたかう子どもたちは、否応なしに比較され、強くなっていく道に進みます。
だけど、スポーツに取り組む子どもたちが必ずしも金メダルを目指して取り組んでいるわけではないと思うんです。それぞれの目標に合った輝き方があってもいいはずですよね。

大人の基準を横に置いて、その子が選ぶ「色」を信じよう
僕が親子でワークショップをやる時に保護者の方に伝えているのは、「きちんとコミュニケーションを取ってほしいけれど、子どもの意思を大事にしてください」ということです。
例えば、子どもが自分の好きな色を選ぶ場面があります。すると、親のほうから子どもに対して「この色のほうがいいんじゃない?」とか「いつもこの色好きだよね、これにしたら?」っていう声かけが出てくることがあります。でも僕は、それは子どもの個性を否定してしまうこともあると思っています。
もちろん、いつもコミュニケーションを取っている親子だからこそ、わが子の好みを理解しているのは、すごく大事なことです。でも、子どもって、その場で初めて出逢う色にひかれることもありますよね。
そういう、ひらめきの瞬間を大事にしてほしいんです。
本当はほかに好きな色があるのに、大人の言葉に合わせて違う色を選んでしまう子どももいます。だから子どもには、「ママやパパのおすすめはいったん横に置いてみていいんだよ。自分が好きな色をそのまま選んでみて」と伝え、子どもの選択を尊重することを大切にしています。
ルールを守りあうことが、子どもと対等な関係になる鍵になる
一方で、尊重してあげるだけではいけない場面もあります。
ワークショップを行うときに必ずすること
僕は注意事項の読み上げも全部自分でして、なぜそれが駄目なのか、理由まで説明します。そのうえで、「じゃあ、一緒に楽しもうね」という流れにもっていきます。
ルールは守らなければいけないもの。そこに「僕はこうしたいから守りたくない」という子がいるかもしれません。でも、それを全て良しとすることが個性を尊重するということではありません。
何のためにルールがあるのか。他のお友達との共同生活のためでもあるし、守らなかったらケガをするかもしれない。「ダメなものはダメだ」ということは、子ども相手でもきちんと伝えます。
子どもたちと接するときに大切にしているのは、「対等」であること
約束がちゃんとあって、それをみんなで守るからこそ、大人も子どもも関係なく楽しめる。その線引きを大事にしています。
ただ優しくすればいいというものでもないし、ただ一緒に遊べばいいということでもないんですよね。
僕を、「子どもたちと遊んでくれるお兄さん」というイメージで見る方も多いかもしれません。でも実は、僕のほうこそ、子どもたちに「遊んでもらっている」感覚なんです。「遊んでくれてありがとう」という気持ちで接しています。

子どもたちと対等に遊ぶことができる人間であるというのは、すごく幸せな立場だと思っています。全国に友達がいるような感覚で活動しています。
子育てに「正解」はない。子どもと一緒に未来に跳躍しよう
よく「子育てに失敗した」とか「こうやれば成功する」といった話題があります。それを聞いて不安になったり、自信を失ったりすることがある保護者の方も少なくないと聞きます。
でも、誰が失敗だと決めたのでしょうか。
僕は、子どもたちと関わるときに、比較はしないようにしています。
子どもたちはそれぞれ、何にも代えがたい宝物を持って生まれてきています。だから、一人ひとりを尊重していきたい。その思いは、現在の活動の原点になっています。
僕は、個性の違う子どもたちの集まりがすごく楽しいし、面白いと感じます。だから、今している子育てが失敗だと思う必要はありません。胸を張っていいと思います。
親が見ている子どもの姿と、学校に行っている時の姿は違うと思いますし、そこが見えないぶん、不安になるのは当たり前のことです。でも、子どもたちは色々な場面やさまざまな経験を通して成長しています。だから不安になる必要はない。
そう言われても、つい不安になるのが親心ですよね。
その気持ちを抑え込まずに、自然なものだと受け止めてほしいです。

誠お兄さんはどこへ跳ぶ?
もう、今やっていることをそのまま続けながら、より多くの子どもたちと会いたい。それだけです。
子どもたちと心を弾ませ続けたい
これまでいろいろな経験をして、大人になって、自分が心からやりたいと思えることが見えてきました。それが、子どもたちと一緒に楽しむことなんです。
僕は今も、「好き」とか「楽しい」と感じて心が弾む、その感覚をもち続けています。子どもたちと全力で遊ぶ。その時間が何よりも楽しいと感じるのは、僕にとって、これが天職なんだと思います。
このまま、より多くの子どもたちが「楽しい」と思える時間を増やしていきたい。
未来が楽しみだと感じる子どもが、一人でも増えてくれたら嬉しいです。
保護者のみなさんへのメッセージ
親子でコミュニケーションをしっかり取って、たくさん期待もしてあげて、子どもの個性を楽しんでください。
取材中、福尾さんは一つひとつの質問に対し、こちらをまっすぐに見つめ、丁寧に言葉を紡いでくださいました。誠実な語り口からは、子どもたちに対する深い敬意と、ご自身の活動への強い信念が伝わってきました。印象的だったのは、柔らかい物腰の内側に秘められた、揺るぎない「芯」の強さです。それは決してぶれることのない、しなやかで強靭な「こころの体幹」のようにも思えました。「まずは大人が楽しむこと」「子どものひらめきを信じること」。福尾さんが coseiro の活動を通じてまいていく種が、子どもたちの心の中で、未来を自由に跳び越えていく大きな力となるでしょう。
取材・構成/甲斐ゆかり(サード・アイ)
ポピフル読者に、福尾 誠さん直筆サイン色紙を1名様にプレゼントします。
応募の締め切り 2026年5月14日(木)
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