小学校、今と昔でどう違う?

小学校、今と昔でどう違う?

小学校での学びは、今と昔とどう違う?小学校の校長先生にお話をうかがいました。今求められているものとは?

2020年度に学習指導要領が改訂され、技術革新が急速に進み、予測困難なこれからの時代をたくましく生きていけるように、アクティブラーニングの一層の推進やICT環境の整備が進められてきました。現代の小学生はどのような環境で、どのような学びを求められているのでしょうか。園児のスムーズな就学のため保幼小連携にも力を入れられている九段小学校の校長先生にお聞きしました。

難波明夫先生

難波明夫先生

千代田区立九段小学校 校長

東京都千代田区の九段小学校は保幼小連携に力を入れており、同敷地内の幼稚園はもちろん、学区内の私立保育園ともつながりを持ち、地域一体となって子どもたちの成長を支えています。小学校・幼稚園・保育園の垣根を越えて異年齢の交流が多く、スムーズな就学を実現しています。


令和のキーワードは「個別最適な学び」

かつての小学校の授業では、先生の説明を聞き、黒板に書かれた内容を必死に写すというスタイルが多く、どうしても挙手をして発言する子がフォーカスされる傾向にありました。しかし、一人に一台タブレット端末が支給され、ICTを活用した授業が行われている今、個別最適な学び」がスタンダードになりつつあります。例えば、授業中に「どう思いますか?」と先生が投げかければ、子どもが各自でタブレット端末に入力し、全員の意見を閲覧することができます。一人ひとりが自分自身の意見を伝えながら、多くの人の異なる意見にも目を向けていく。個の特性や学習進度に着目しながら、対話的・協働的に自分の考えを深めていく、という学習へと進化をとげているのです。

タブレット学習は進めど、不易な部分も多い

学習指導要領改訂やタブレット端末の導入などもあり、今はおうちのかたの世代とは学習環境が異なることは事実です。ただ、小学校教育には不易の部分もたくさんあります。健康な体と豊かな心を育てたいという現場の想いは今も同じですし、プログラミング的思考や英語教育の強化などが言われていますが、入学前にひらがなが書けなくてももちろん大丈夫。小学校って楽しい!と思いながら通ってほしいし、安心・安全な学級づくりは今でも最優先事項です。小学校はお子さんがのびのびと、いきいきと、元気に過ごせる場所でありたい。学習環境の変化はご理解いただきながらも、根本的な小学校の役割は変わっていませんので、あまり身構えることなく就学を楽しみにしていただければと思います

大切な生活習慣は早寝・早起き・朝ごはん!

どうしても学習のほうに目が行きがちですが、小学校生活で1番大切なのは、実は生活習慣なんです。授業はもちろん大事。宿題も大事。でも、お子さんの元気のもとはなんといっても「早寝・早起き・朝ごはん」です。私は遅刻してきた子がいたら、まず最初に「朝ごはん食べてきた?」と聞きます。そして「食べてきた」と答えてくれたら、もうそれでOKです。お子さんの学校での学びや成長は、私をはじめとした先生たちにお任せください。でも1日の活動の土台となる健康は、ご家庭の協力なしには実現しません。失敗しても、お友だちとけんかしてもいいんです。たくさん寝て、朝ごはんをしっかり食べる。大人も子どもも忙しい現代ですが、これだけはぜひ取り組んでいただきたいですね。

言うことは同じでも意義や意味を大事にする

手をおひざの上にのせましょう。顔とおへそを先生に向けましょう。最後まで静かに話を聞きましょう。入学後の4月・5月は特にこういった習慣を授業の中で徹底していくことになります。そう、先生が子どもたちに言っている内容は昔と全く同じで、不易の部分です。ただ、なぜそうしたほうがいいのか?という背景を含めて説明するようにしています。実は、こういったルールは、誰もが安心して意見が言える対話的・協働的な雰囲気をつくるために欠かせないのです。名前を呼ばれたら返事をするというルールも、当然のことのように思えますが、これは気持ちや行動の切りかえを行う上で非常に大切なこと。こうして、一人ひとりの意見を尊重するための環境をつくっていきます。

まずは親が焦らないこと! 子どもの主体性を大切に

英語教育の早期化と聞いて、慌てて英語を習わせるおうちのかたがいらっしゃいますが、入学に向けて何かを焦って始める必要はありません。「個別最適な学び」を実現するにあたり、何より大切なのは子どもの主体性です。子どもがやりたいかどうか、その意見を自分で伝えられるかどうかが大事なのです。おうちのかたの意向でやらせてみて「なんでできないの?」というのはNGです。まずはお子さんの話をたくさん聞いてみましょう。家庭でも安心して話せる環境があったり、気持ちを引き出してもらえる機会が増えたりすると、自分の言いたいことが言えるようになってきます。対話のポイントは、親子ともに心のゆとりがあること。毎日、少しでもいいので対話する時間がとれるといいですね。

令和に求められる力 子どもの主体性 意見

小学校の今と昔の違い、今と昔を比べてみて気づくこと

■令和は「一人ひとり違う」ことが大前提

令和の小学校は一人ひとりの個性を認めることがすべてのベースになっています。道徳の時間も、昔はひとつの模範解答を目指すような雰囲気がありましたが、現在はさまざまな視点から多様な意見が飛び交い、正解を求めることが目的ではありません。自分と違う意見があり、それぞれの個性があるという姿勢を子どもたちも日々の学びから身につけています。また、出席番号が男女混合となっていたり、男女ともに「〇〇さん」と呼んだりするなど、性差による区別がなく、あくまで「個」を大切にするのも令和の特徴です。

■手紙や出欠連絡もアプリで、という時代

子どもたちの授業はもちろん、学校と保護者間の連絡もデジタル化が進んでいます。例えば、学校からのお手紙の配布や緊急の連絡、保護者からの出欠連絡もアプリを使ってできるようになっていて、中にはアンケート機能がついたものもあります。PTA関連の連絡も、メールやアプリなどで管理するところが増えており、ペーパーレス化効率化が進んでいます。また、学校行事で撮影された写真も、今ではオンラインでの販売に。昔のように学校に掲示された写真の番号を控えて封筒に書いて……ということは、もう少ないようです。

■持ち物が多い!いまどきの小学生

コロナ禍を経て、小学生は水筒を持参するのが当たり前になりました。特に夏場は熱中症対策ということもあり、ある程度大きな水筒を持っていく必要があります。さらにタブレットを毎日持ち帰る場合もあり、加えて教科書やノート、月曜は体操服や上履きもとなると、大人でも憂鬱になるくらいの荷物になります。ただ、最近では重さに配慮し「置き勉」ができる学校も増えてきているため、学校ごとのルールを確認するとよいでしょう

■個人情報、防犯、気候変動、先生の負担軽減なども令和の特徴

家庭訪問がない、クラスの連絡網がない、放課後校庭で遊べない、防犯ブザーを持ち歩く、運動会は春開催、プールの授業が少ない……などなど、時代の変化に合わせて変わったこともたくさんあります。個人情報や安全管理の問題は厳しくなる一方、昔は食べきるまで居残りだった給食に関しては、事前に量が調節できるようになり、完食が強要されることはなくなりました。給食のメニューにチリビーンズやプルコギなど国際色豊かな味が増えるなど、食の体験が広がるうれしい変化もあります。

子どもたちの過ごす環境は、選択肢が増えたり、活動が広がったり、便利になっていく一方で、制限が増え、時には変化に振り回されることもあります。保護者のかたが小学校生活に関わりながら理解を深めることで、いきいきとした学びの場を支えていきましょう。

イラスト/すがわらけいこ 文/池田恵子 編集協力/KANADEL

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