こどもクリニック院長に聞く! アトピーの正しい対処法と治療

こどもクリニック院長に聞く! アトピーの正しい対処法と治療

必見!ヘルスケア

子どものアトピー性皮膚炎の正しい対処法をご紹介。アレルギーマーチを予防するためにも早期対応が重要です。

そろそろお肌の乾燥が気になる冬がやってきます。子どもの皮膚の乾燥やかゆみ、湿疹は、アトピー性皮膚炎が疑われる場合があります。アレルギー性疾患の一つである「アトピー性皮膚炎」の概要と、症状や治療法を小児科医の鈴木 洋先生にうかがいました。

鈴木 洋 先生

鈴木 洋 先生

鈴木こどもクリニック 院長
信州大学医学部卒業。東京大学医学部助手、愛育病院新生児科部長を経て東京都墨田区に「鈴木こどもクリニック」を開業。南米をはじめ30か国以上で、日本人の子どもたちの診療や健康相談等に関わってきた。育児や小児の健康に関する新聞・雑誌記事の執筆、著書等多数。

アトピー性皮膚炎を抑える対策は?

まず、「ほほえみお母さん&お父さん」に掲載のクイズの答えをみていきましょう。

子どものアトピー 対処法
子どものアトピー 対処法

Q.鈴木先生 教えて! アトピー性皮膚炎を抑える対策として間違っているのは?

 部屋や寝具はいつも清潔にしておく

 室内を加湿し、乾燥させないようにする

 患部は、石けんやシャンプーの泡でやさしく洗う

 かゆみがあるときは、保湿剤は控える


答えは

そもそもアレルギー疾患とはどんなもの?

小児科では、風邪のような感染症の次に多い病気がアレルギー関連の病気です。アレルギー疾患で代表的なものは、アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症、蕁麻疹などです。感染症の多くは「急性」疾患の代表ですが、アレルギー疾患は「慢性」の病気の代表でもあります。

そもそもアレルギーとは、人間の持つ「免疫機能」が引き起こすもの。免疫とは疫病から免れるということです。多くの感染症では一度かかると二度とかかりません。例えば麻疹は一度かかると麻疹ウイルスに対する抗体ができ(免疫ができるともいいます)、次に麻疹ウイルスが侵入してもこの抗体が退治してくれるので、麻疹にかからないのです。このように免疫は体を外敵から守るすばらしい防衛システムなのですが、その反応が体にとって不都合になることがあります。それがアレルギーと言われる現象です。

赤ちゃんのときに皮膚の乾燥、湿疹が続くと、幼児期にアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症しやすくなります。また、小学校に入る前くらいから気管支喘息が出てきて、中学校に入る頃になるとアレルギー性鼻炎・結膜炎が増えてきます。このように、アレルギーになりやすい体質の人が、成長するにつれて次々にアレルギー症状に悩まされることを、行進(マーチ)に例えて「アレルギーマーチ」と呼びます。
このアレルギーマーチを進行させないためにも、アレルギー疾患の発症に「できるだけ早く気づくこと」「適切な治療と管理により症状をコントロールしていくこと」が重要です。

アトピー性皮膚炎の原因は? 予防は可能なの?

アトピー性皮膚炎は、肌のバリア機能の低下や皮膚の炎症がもとでアレルゲンなどの外部刺激が体内に入りやすくなり、これらが免疫細胞と結びつくことで炎症を引き起こし、発症します。また、かゆみを感じる神経が皮膚の表面まで伸びてきて、かゆみを感じやすい状態となり、掻くことによりさらにバリア機能が低下するという悪循環に陥ってしまいます。遺伝的要素やアレルギー刺激など体質的な要因と、乾燥やほこり、汗など環境的な要因、またストレスも原因だといわれています。
このようにアトピー性皮膚炎の原因は複雑で多岐にわたるため、残念ながら、現在のところ有効な予防法は見つかっていません。発症が疑われる場合は、速やかにかかりつけの小児科医に相談しましょう。

アトピー性皮膚炎はどんな症状が出るの?

アトピー性皮膚炎の主な症状はかゆみ・乾燥・湿疹です。湿疹の出やすい部位が年代によって異なるという特徴があります。

乳児期:頭や顔から始まり、からだや手足へとひろがることも

幼小児期:肘の内側、膝の裏、足首の前、首のまわりに見られる

思春期、成人期:上半身(頭、首、胸、背中)に強い傾向がある

アトピー性皮膚炎の治療に向けた3つのアプローチ

アトピー性皮膚炎の「治療のゴール」はどこにあるでしょうか。日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」では、「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること」とされています。アトピー性皮膚炎の治療は主に以下の3つで成り立っています。

薬物療法: ステロイド外用薬が最も広く使用され、炎症を抑えるのに効果を発揮

スキンケア: 毎日の保湿が皮膚のバリア機能を保つために重要

ライフスタイルの改善: アレルゲンの回避や生活環境の見直しが症状の悪化を防ぐ

アトピー性皮膚炎の治療薬として一般的なのは「ステロイド外用薬」です。炎症を抑える塗り薬で、効果の強さによって5つのランクがあり重症度や塗る場所で使い分けます。ステロイド外用薬に関してはネガティブな印象を持っている人もいるようですが、用法・用量、使用期間を守って使用することで局所的な炎症反応をすみやかに抑えてくれる、なくてはならない薬です。そのほかにかゆみを抑える抗ヒスタミン剤や、重度の皮膚症状を抑える注射や内服薬なども増え、近年治療の選択肢は拡大しています。
アトピー性皮膚炎は皮膚症状を繰り返すのが特徴です。症状が改善しても治療薬を計画的に使い続け、皮膚症状のない状態を維持する必要があります。中途半端に治療薬をやめてしまったり、通院しなくなったりすることによって、症状がぶり返し悪化することもあります。かかりつけのお医者さんと共に、根気強く治療を続けることが最も重要です。

肌が乾燥する冬に向けて、保湿が特に重要!

乳幼児の肌はぷよぷよと柔らかく、たっぷりの水分を蓄えていそうですね。しかしその皮膚は大人の2分の1程度の厚さしかなく、バリア機能(体内の水分を逃さず外界からの刺激から守る力)が未熟です。また、皮脂の分泌量も保湿成分も少ないため、乾燥しやすいのが特徴です。皮膚が乾燥するとさらにバリア機能が弱くなり、汗や汚れ、カビ、細菌、ウイルス、ダニ、埃などの影響を受けて、皮膚トラブルを起こしやすくなります。
スキンケアの基本は、お肌を清潔に保つための洗浄と、うるおいを保つための保湿です。この2つを正しく行い、低下している皮膚のバリア機能をしっかりと保持しましょう。

1. 刺激の少ない石けんやシャンプーでていねいに洗い、よく流す

石けんは十分に泡立てます。きめの細かい、しっかりとした泡を作りましょう。「泡立てネット」の利用や、泡で出てくる「ポンプ式」も便利です。

泡を使って手で洗いましょう。ナイロンタオルなど刺激の強いものは避けましょう。手で洗うことで皮膚の状態をじかに感じることができます。

しわも伸ばして洗いましょう。特に、首や関節部分などはしっかり伸ばして洗います。顔や目のまわり、湿疹がある部分もやさしく洗いましょう。

汚れや泡が残らないようによく流しましょう。石けんが残っているとお肌の刺激になります。ぬるま湯でしっかり流しましょう。高温のシャワーや長時間の入浴はかゆみが起きやすいので避けましょう。

体を拭くときは吸湿性のよいタオルで押えるように拭きましょう。ごしごしこすると肌あれのもとになります。

2. 保湿剤は朝晩2回、たっぷり塗ってあげる

子どもの肌は大人よりも薄く乾燥しやすいため、保湿剤をしっかり使うことが重要です。

お風呂上がりと朝の着替え時に塗るのがよいでしょう。

入浴後、肌がまだ少し湿っている状態で塗ると、保湿効果が高まります。

冬場は油分を加えるためにクリームタイプや軟膏タイプを活用して。乾燥が強い場合は軟膏タイプがよいでしょう。乾燥が強い部分(肘、膝の裏、手足の指先)には特に厚めに塗るのが効果的です。

3. 加湿器で室内環境を整える

乾燥を防ぐ環境づくりも重要です。室内の湿度は40~60%が理想。加湿器や洗濯物の室内干しなどで調整しましょう。特に暖房を使うと空気が乾燥しやすいので注意しましょう。

4. かゆみを我慢できないときのために爪の手入れをしっかりと

かゆみを我慢できずにかきむしってしまうと、傷からばい菌が入り「とびひ」になることも。爪は短く整える、かゆみが強い場合は手袋をはめて寝るなどの対策も有効です。

5. 赤みや湿疹が出た場合は早めにお医者さんへ

保湿ケアだけでは改善しない赤みや湿疹、強いかゆみの症状を見逃さないようにしましょう。気になる場合は、速やかにかかりつけの小児科を受診したり、アレルギー検査などの相談をしてみるのもよいでしょう。

まとめ

アトピー性皮膚炎は夏と冬に悪化する傾向があります。夏は汗が皮膚への刺激となって症状を悪化させます。冬の悪化原因の主なものは乾燥です。バリア機能が低下している皮膚には、乾燥によってさらに刺激が加わりやすくなるのです。皮膚を清潔に保ち保湿することで、皮膚を乾燥から守り、アトピー性皮膚炎の悪化を防ぎましょう。

取材・文/那須由枝 編集協力/東京通信社

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