
親子の対話で学びの土台を作る~忙しくてもできる対話の絶大な効果~
幼児期にこそやるべき6つのこと
幼児教育とコーチングのプロの江藤真規先生が、「幼児期にこそ家庭でやるべき6のこと」を伝授。明日からの子育てが変わります!
目次
幼児期は大切な時期。自分でできることが増えてくると、子どもの学びも気になってきます。しかし、心に余白がなくなるほどの詰め込み過ぎには要注意。今大切なのは、学びの土台をつくること。子どもを急いで前進させることではなく、子どもの興味、関心に親が付き合うことが大切です。子ども自身が「おもしろい!」「不思議!」と感じる経験こそが、その後の学びの土台となるからです。
ここで絶大な効果を発揮するのが「対話」です。忙しい日常でも簡単に取り入れられる対話の工夫について考えていきましょう。

江藤 真規 先生
幼児教育とコーチングのエキスパート。
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。IPU・環太平洋大学 特命教授。アカデミックコーチング学会理事。
幼児教育のエキスパートとして、幼児教室の運営と保育士指導を行うとともに、教育コーチングオフィス サイタコーディネーション代表として、保護者や教職員を対象とした講演・セミナー、執筆活動などを行っている。子どもの主体性と思考力・表現力を育む家庭環境作りにも定評がある。
幼児期に育つ「見えない力(非認知能力)」とは
「ひらがなが読めるようになった」「数が数えられるようになった」など、できなかったことができるようになるのは、子どもにとって嬉しい経験です。また、英検や水泳の級などわかりやすい目標があれば、子どもは努力を重ねます。
しかし、ここでは親の向き合い方が問われます。親がどう関わるかによって、「できるようになった」先が、大きく変わってくるからです。
「あ、それは違う。間違えないように」
「全部できたね、合格」
「〇〇ちゃんは水泳の級が上がったみたいよ。あなたも頑張って」
例えば、親が成果だけを見る評価者となってしまうと、子どもの中では「お父さん・お母さんのために成果をだすこと」が、頑張りの目的となってしまいます。
「楽しく取り組んでいたね」
「気持ちを切り替えて、最後までやり遂げたね」
「自分でやると決めたこと、継続できているね」
他方、子どもの取り組む様子を見て、その過程に言葉を添えるよう意識すれば、自分を信じる力、立ち直る力、継続する力など、目には見えにくいけれども、とても大切な力が育ちます。
このような力のことを、非認知能力と言います。学びの土台となる力です。
対話で育む非認知能力〜学びの土台
ここで鍵になるのは親子の「対話」です。何か特別な経験をさせなくても、日常のやり取りを意識するだけで、子どもの経験の意味が変わります。
- 対話を意識すれば、子どもの「今ここ」が見えてきます。親主導を離れ、子どもに合わせた関わりができるようになります。
- 対話を通して、子どもは「自ら考え」「自分の言葉で表現する」経験を積むことができます。
- 対話のタイミングを探ろうとすれば、自ずと「取り組みの過程」に目が向くようになります。
つまり、対話をすることで、学びの土台が作られるということです。

『3000万語の格差』が示した衝撃
幼児期に触れる言葉の量や質の違いが、その後の言語力や学力にも大きな影響を与えることは、科学的な視点からも明らかにされています。『3000万語の格差−赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話し掛け』では、以下の調査結果が紹介されています。(注)
- 子どもに語りかけられる言葉数は、家庭によって異なる。
- 生後30カ月間で見ると、語りかけが多い親に育てられた子どもは平均で4,800万語を語りかけられたのに対し、少ない環境で育った子どもは平均で1,300万語、両者の間には、3,000万語の差があった。
- 言葉の発達が早く、幼稚園入学時に言語能力が高かった子どもは小学校での成績が高かった。
もちろん、「たくさん話しかければよい」という単純な話ではありませんし、成績と関係があるから言葉が重要という指摘でもありません。しかし、親の意識に応じて、こんなにも子どもの世界にある言葉数が異なることは一つの衝撃です。幼児期という大切な時期に、意識的に子どもとの対話の習慣を作っていくことは大切です。
親子の対話を難しく見せている誤解
「対話が大切」と聞くと、「なんだか難しそう」「時間を確保しなきゃ」と身構えてしまう方も多いかもしれません。しかし、対話は難しい営みではありません。対話への誤解を解いていきましょう。
「毎日忙しいから、対話の時間がない」と思っていませんか? 大丈夫です。対話をするには、まとまった時間は必要ありません。むしろ隙間時間での短いやり取りの積み重ねが、大きな意味をもたらします。
「教育的な観点で話さなければならない」と思っていませんか? そんなことはありません。対話の目的は「教えること」ではなく、言葉のキャッチボールを楽しむこと。何気ないやり取りにこそ、大切な学びが含まれています。
子どもが間違ったことを言った場合にはどうすればいいでしょう。訂正したくなる気持ちもわかりますが、正しさを優先し過ぎると、子どもの発話を止めてしまい兼ねません。子どもが安心して言葉を発する環境が大切です。
非認知能力を育む親子の対話を成功させる3つの意識

対話は相手を尊重した関係性の上に成り立ちます。よって対話を成功させるためには、技術を磨くよりもマインドが必要です。3つの意識をご紹介します。
1. 一方通行ではなく「双方向」のやり取りを意識
親が話し続けるのではなく、子どもとの双方向のやり取りにする。ボールを投げるだけでなく、キャッチボールにしていく意識をまずは持ちましょう。 そうすることで指示命令の言葉は減り、子どもへの質問が増えてきます。
「今日は何をして遊んだの?」「鬼ごっこしたよ」
一往復できました。さらにここでキャッチボールを意識すると
「何鬼をしたのかな?」「どんな風に逃げたのかな?」
「次はどんな鬼ごっこやってみたい?」
など、次の質問が出てきます。
このようなやり取りの中で、子どもは自らの経験を振り返り、考え、そして自分の言葉で表現することができるようになります。思考力や表現力が育ちます。
2. いかなる言葉も受け止める
緊張した環境では、子どもの心は閉ざされてしまいます。いかなる子どもの言葉も、親がまずは「受け止める」ことで、子どもは安心して言葉を発することができるようになります。
「今日は何をしてあそんだの?」「何もしなかった。つまらなかった」 例えばこのような、親にとっては望ましくない言葉が返ってきたとしても、「そうだったのね」と、子どもの気持ちを受け止めます。
子どもがもっと話したそうなら、「何がおもしろくなかったかな」と聞いてあげるのもよいでしょう。話すかどうかを決めるのは子どもです。子どもが話したくない様子なら、根掘り葉掘り聞くのはNGです。安心できる環境があれば、そのうち自ら話をしてくることでしょう。
3. 子どもの興味に合わせる
親にとっては、「良い対話」と「悪い対話」があるのかもしれません。子どもがどうでもいいような話をしている時、愚痴ばかり言ってくる時には、「こんな対話はすぐにやめたい」と思ってしまうかもしれません。
しかし、対話の主導権を握っているのは子どもです。親が話したいことではなく、「子どもが見ている景色」「感じていること」を掘り下げていくことで、対話はぐっと豊かになります。
とはいえ、道徳的によくないことを子どもが言ってきた時には、見過ごすわけにはいきません。
例えば、「腹がたったから友達を叩いた」との主張には、
「あなたはそう感じているんだね。でも、その時友達はどんな気持ちだったかな」
「そういう時には言葉で伝えるのがいいと思うよ。なぜなら…」
と、相手の気持ちに気づかせたり、親の意見を伝えていく姿勢が大切です。頭ごなしに叱るのではなく、対話を通して伝えていきましょう。
今日からできる!日常に取り入れたい親子の対話の工夫
もちろん、子育てには正解はありません。「おもしろそう!」と思うことがあったら試してみる、こんな緩い姿勢がよりよい明日を作り出します。日常に取り入れやすい対話の工夫をまとめてみました。「おもしろいかも!」と思うものがありましたら、試してみてください。

- 食事中に「質問」を1つしてみる
(食事時間は最高の対話時間です) - お風呂や移動中など、「横並びの時間」に対話をする
(同じ景色を見ながら話すとイメージを重ねやすくなります) - 「子どもの取り組み」を言葉にする
(例:「ブロックであそんでいるんだね(ただし集中している時には見守りが大切)」) - 寝る前に1日を振り返る時間をつくる
(例:スキンシップをとりながら楽しかったことを話す) - 自分の気持ちや考えも共有する
(例:「お母さん、とても嬉しいよ」) - 「どんなふうに?」「どうしたら?」を口癖にする
(Howの質問は、子どもの言葉を引き出します) - 沈黙を怖がらず「待つ」
(子どもからの返答に時間がかかるのは考えている証拠)
何より大切なのは、対話を通して、子どもが「自分は大切にされている」と感じること。親子の絆が深まります。そして、対話をすることで、子どものことをもっと知ることができるようになります。すてきな部分、かわいらしい姿がたくさん見えてきて、今日以上にポジティブな気持ちで子育てができるようになるでしょう。
(注)ダナ・サスキンド『3000万語の格差−赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話し掛け』、明石書店、2018
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