子どもの食が細い!だらだら食べや好き嫌いが気になる!への対処法

子どもの食が細い!だらだら食べや好き嫌いが気になる!への対処法

保育のプロの技

食が細い、だらだら食べや好き嫌いが気になる、そんなお悩み解決のヒントを保育のプロに教えていただきました。

いろいろと考えて食事をつくっても、なかなか食べてくれなかったり、好きなものばかり食べたり、ダラダラとあそびながら食べたり、と悩みが尽きないパパ・ママも多いのではないでしょうか? そんな食に関するお悩み解決のための手立てをNPO法人家庭的保育支援協会代表理事の須貝美香先生にうかがいました。

須貝 美香(すがい みか)先生

須貝 美香(すがい みか)先生

保育士として保育園勤務を経て1997年に在宅保育を開業。現在は、認可園3園を運営し、台湾と上海で活動しながら、子育てアドバイザーとして企業や自治体などで家庭的保育に関する研修講師、保育士や保育施設経営者研修、民間保育園の園内研修などを多数行う。保育者に寄り添い、子ども・子育て家庭に温かい支援に貢献している。著書に『漂流する待機児童たち』(幻冬舎)『保育士が教える「子育て」の正解』(幻冬舎)がある。

子どもがごはんを食べない!食が細い!の対処法は?

生活リズムを整えて、しっかりと「お腹を空かせる」

1日3回の食事習慣は、規則正しい生活リズムを整えるところからスタートしましょう。朝食・昼食・間食(補食)・夕食をきちんと食べさせるためには、“定点”を作って生活のリズムをつくることが大切です。

好き嫌い だらだら食べ 対処法

「ダダをこねるから」、「泣いてうるさいから」などと決まった時間以外で安易におやつをあげてしまうと、そのあとの食事にも影響が出ます。決められた食事の回数や時間を守ることを教えるために、少し我慢をさせることも大事。十分にからだを動かしながらあそぶなどしてしっかりとお腹を空かせれば、食事が楽しみになりますよ。

食事時間は20~30分を目安に

子どもが食事に集中できるのは20~30分程度といわれています。食事の時間が長くなると飽きて食べものであそびはじめるなどの“だらだら食べ”につながってしまいます。片づけようとすると「まだ食べる!」と言うのは、本当に食べたいわけではないことも多いのです。20分~30分くらいしたら、お皿に食べものが残っていても食事を終わらせましょう。食べ残した場合でも、あとでお腹が空いてしまうのは食事をちゃんと食べなかったからだ、ということを理解できるようになります。
小学生になれば、給食の時間は約20分間です。先々のことも考えて、決められた時間内で食べられるように習慣をつけていきましょう。

これなら伝わる! 食事の大切さ

バランスのよい食事の大切さは、こんなふうに伝えよう

お子さんの偏食で悩んでいらっしゃるパパ・ママも少なくないと思います。「好き嫌いをせずにバランスよく食べるとからだが元気でいられるよ」と、お子さん自身が理解できるように伝えてあげることが大切です。「食材や栄養素のことを話しても分からないでしょ」などと決めつけてはいけません。
たとえば、私たちの園では下記のような図を使って、1日のスタートとなる朝ごはんをきちんとたべると「3つのスイッチ」が入るとお伝えしています。

好き嫌い だらだら食べ 対処法

また、園で配布される「調理室だより」などには食事に関する有益な情報が満載です。子どもたちが食べやすいように工夫された献立を家庭での食事メニューに取り入れるなど、積極的に活用しましょう。食育の絵本などを活用するのもいいですね。パパとママがどのようなことを考えて毎日の食事を用意しているのかということも含めて、バランスよく食べることが健康を守るということをお子さんに伝えてあげましょう。

食事への感謝の気持ちを育てるには?

「いただきます」という食事のあいさつにはどのような意味があるのか、話題にされることはありますか?「食べる」ということは「食材の命をいただく」こと。食材自体の命や生産者さん、お店の人たち、食べものを買って調理してくれるパパやママ、もしくは園の調理担当者さんなど、たくさんの人たちの手によって私たちの食事が支えられていることへの「感謝の気持ち」を育むことはとても大切です。
食べたものを自分で片づけさせるのもよい方法ですね。残った食材をゴミ箱などに捨てるところまでを自分でやることで「食材をむだにしてしまって、ごめんなさい」という気持ちを持てるようになります。
ちなみに、お子さんの食べ残しを「もったいないから」とおうちのかたが食べてしまうのはNGです。自分が食べなくてもパパやママが食べてくれるからOKということになり、食べ残したことへの罪悪感だけでなく食べものへの感謝の気持ちまでも薄れてしまいます。おうちのかたがなんでも尻ぬぐいをする姿を見せるのは逆効果になるので注意しましょう。
完食するよろこびを知って、「おかわり」できるしあわせを味わうことが大事です。

好き嫌い だらだら食べ 対処法

食べず嫌い・好き嫌いの対処法

「手づかみ食べ」や栽培・調理でまず食材に慣れさせる

小さい子どもが食べものをベッと口から出すのは味がおいしくないと感じているからではなく、その食材に対する経験値が少ないことによります。1歳前後からの「手づかみ食べ」は、手と口を使って食材の色や食感、形状、味などをインプットする重要な作業。手づかみ食べをあまりさせていないと食材の情報量を十分に得られず、食べず嫌いになる傾向があるので、まだ間に合う場合は手づかみ食べをたくさんさせてあげましょう。
もうそういう年齢ではないという場合も、食材を自分で栽培したり調理したりして、食材にたくさん触れることで同じ効果が期待できます。

調理方法を変える

特定の食材を嫌う場合は「どんなところがイヤだったの?」と細かく聞いてあげましょう。たとえば、「トマトの皮がプチッとはじける感じがイヤ」というのであれば、目の前で湯むきをしてみてあげると簡単に食べられるようになるかもしれません。また、温野菜のほうが食べやすい子もいれば、冷やしたおひたしなどのほうが食べやすいと感じる子もいます。お子さんの感じ方を丁寧にヒアリングして寄りそってあげることが大切です。調理方法を変えると食感などもガラリと変わるので、食べられるようになることも多いですよ。

盛りつけを工夫する

目から入ってくる情報は大きいので、盛りつけを工夫することで食べられるようになることもあります。ワンプレートのお子さまランチ風にして気分を盛り上げたり、野菜を飾り切りにしたり、のりなどで顔をつけたりすることで楽しく食べられるようになるので、試してみてはいかがでしょうか。

おやつ≠甘いもの

幼児の場合、おやつ=甘いもの、ではありません。子どもの胃袋はまだ小さく1回の食事でたくさん食べられないため、
1日3回の食事で摂りきれない栄養素を補うのが「おやつ(補食)」です。
野菜や小魚などを使って、食物繊維やカルシウムなどを摂取できるようなおやつを考えてあげましょう。たとえば、しらすをご飯に混ぜ込んだ「しらすおにぎり」や、さつまいもをレンジでチンして柔らかくして少量のバターや砂糖を加えて丸めた「簡単スイートポテト」、ホットケーキミックスにニンジンのすりおろしを加えて焼いた「簡単キャロットケーキ」、キャベツとコーンに小麦粉と水を加えて焼くだけの「簡単お好み焼き」などが手軽でおすすめです。サランラップをつかって丸めたりフライ返しでひっくり返したりと、お子さんと一緒につくると一層楽しくパクパク食べてくれますよ。おやつの量は【こども用茶碗で8割程度】を目安(注1)にするとよいでしょう。
おやつにお菓子やジュースなどを与えてはいけないということではありませんが、これらの食品に含まれる加糖は依存性が高いため、幼児期の過剰摂取は注意が必要になります。甘いお菓子・ジュースの頻度や量があまり多くならないようにしたいですね。
注1)食べる分量は年齢などによって個人差があります

お箸はいつから使わせたらいい?

ときどき保護者のかたから、お箸はいつから使わせたらいいの?というご質問をいただきます。子どもがスプーンやお箸などの道具を使って食事をするには、いくつか段階があります。
「手の甲を上にしたグー握り」でスプーンを使うのが初期段階です。手の甲を下にしたグー握りで「すくい食べ」ができるようになるとステップアップ。さらに、「えんぴつ握り」でスプーンを持てるようになったら、補助箸などを持たせてあげるタイミングと考えてよいでしょう。

お箸 いつから

えんぴつやペンを使って始点と終点をくっつけて円を描けるようになるなど、目で見ながら脳で状況を理解して手足を動かせる「協応動作」がスムーズにできるようになるのが目安となります。年齢的には3歳くらいです。これよりも早い段階でお箸の練習を始めると正しいお箸の持ち方が身につかない可能性が高いため、多くの園ではお箸を出しません。
補助箸で小さい食べものをつまめるようになれば、ふつうのお箸に移行してもさほど苦労せずに使えるようになるでしょう。

まとめ

「食事は元気の素」であり、食べることで体にも心にも栄養を与えるのが「食育」です。忙しい毎日の中でお子さんの食事へのこまやかな気づかいや、手間ひまをかけることはとても大変なことだと思います。この記事をヒントに、ごはんを食べない、だらだら食べ、好き嫌いなどの食事のお悩みが解消されれば嬉しいです。

取材・文/遠藤祥子 編集協力・イラスト/東京通信社

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