
【小児歯科医監修】子どもが歯みがきを嫌がる!年齢別の対処法とイヤイヤ期の乗り越え方
子どもの歯と口腔ケアガイド
子どもが歯みがきを嫌がる年齢別の原因や対処法、歯みがきイヤイヤ期の乗り越え方を、小児歯科医が教えます!
目次
「歯みがきの時間になると逃げてしまう」「口を開けてくれない」。毎日のことだからこそ、保護者にとって子どもの歯みがきは悩みの種になりやすいものです。しかし、子どもが歯みがきを嫌がる原因には、その年齢ならではの発達や気持ちの変化が隠れています。子どもが歯みがきを嫌がる年齢別の原因や対処法、歯みがきイヤイヤ期の乗り越え方、家庭でできる虫歯予防やホームケアについて、小児歯科専門医の坂部 潤先生にうかがいました。

坂部 潤 先生
キッズデンタル 代表
都内5つの小児歯科専門医。大学病院での小児歯科専門医療の実践や米国UCLA小児矯正科への留学経験、また4児の父親としての経験を生かし、継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。
なぜ? 子どもが歯みがきを嫌がる原因
大人から見ると「なぜ嫌がるの?」と思うことも、子どもにとってはごく自然な反応だったりします。まずは、子どもが歯みがきを嫌がる理由を学齢ごとに見ていきましょう。
0~1歳頃:口の中に触れられる感覚に慣れていない
赤ちゃんはまだ口の中を人に触られることに慣れていません。離乳食が始まる時期でもあり、口の中の感覚そのものが発達している途中です。
歯ブラシが歯や歯ぐきに当たる感触を不快に感じたり、「何をされているのかわからない」という不安から嫌がったりすることがあります。また、眠い、お腹が空いているなどの体調や気分も大きく影響します。
この時期は「しっかり磨くこと」よりも、口の周りや唇に触れられること、歯ブラシが口に入ることに慣れることが大切です。
2~3歳頃:自我が芽生え、「自分で決めたい」気持ちが強くなる
2歳を過ぎると、自我が大きく発達し始めます。いわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれる時期で、「自分でやりたい」「自分で決めたい」という気持ちが強くなります。
そのため、歯みがき自体が嫌なのではなく、「今やりたくない」「言われたからやりたくない」という理由で抵抗することも少なくありません。
また、自分で歯ブラシを持ちたい気持ちが強い一方で、まだ上手に磨くことはできないため、仕上げ磨きを嫌がるケースもよく見られます。
3~4歳頃:遊びや楽しいことを優先したい
3~4歳になると、想像遊びや友達との遊びなど、子どもの世界が大きく広がります。
そのため、歯みがきそのものが嫌というよりも、「もっと遊びたい」「楽しいことを中断したくない」という気持ちが強くなります。
特に夢中になって遊んでいるときは、歯みがきが“遊びを邪魔する存在”になりがちです。また、気持ちの切り替えがまだ得意ではないため、「遊びから歯みがきへ」という移行が難しいこともあります。
5~6歳頃:面倒に感じたり、必要性を理解できなかったりする
年長児になると、自分でできることが増える一方で、「なぜやらなければいけないのか」を考えるようになります。
歯みがきを嫌がる理由も、「面倒だから」「今日はしなくても大丈夫そうだから」といったものに変化していきます。虫歯予防の大切さを説明されても、将来起こる問題を具体的に想像するのはまだ難しいため、毎日続ける必要性を十分に理解できない場合があります。
また、「自分でみがけるから大丈夫」と思い、保護者の仕上げみがきを嫌がるようになることもあります。
歯みがきイヤイヤ期、どう乗り切る?
子どもが歯みがきを嫌がるのは、成長過程では自然なことです。
特に奥歯に歯ブラシが当たると、嘔吐反射が起きやすく、不快感から強く抵抗する子もいます。
ただ、奥歯に歯ブラシが当たる経験を重ねることで、嘔吐反射が少しずつ弱まっていくのが一般的です。「嫌がるからやらない」選択をしたくなるほど、大変な時期ですよね。ただ、毎日少しずつでも続けることが大切です。
ポイントは、
- 毎日同じ人が、同じ場所・同じ時間に行ってパターン化する
- 子どもが泣いても必要なケアは適切に続ける
- 大人が楽しく歯をみがいているところを見せる
歯みがきを「好きにさせよう」と頑張りすぎる必要はありません。
1日1回、特に寝る前の仕上げみがきがきちんとできれば合格と考えましょう。
【年齢別】歯みがきを嫌がる子どもへの対処法
子どもが歯みがきを嫌がる理由は、年齢や発達段階によって異なりますが、理由に応じた対処をすることで、無理なく歯みがきを続けやすくなります。ここでは、年齢ごとの傾向と対応のヒントをまとめました。

歯みがきを嫌がる姿を見ると、つい焦ってしまいがちですが、年齢にあった関わり方をすることが何より大切です。「毎回完璧にみがく」ことよりも、「毎日続ける」ことを目標にしましょう。
虫歯はどうやってできる?幼児の虫歯基本

虫歯は「虫歯菌に感染してできるもの」と思われがちですが、実は生活習慣の影響がとても大きい病気です。
虫歯の原因は、ミュータンス菌に代表される虫歯菌です。この虫歯菌は、砂糖などの糖分をエサにして酸を出します。その酸が歯の表面を溶かしてしまうため、虫歯ができるのです。重要なのは、虫歯菌がいるかどうかよりも、菌が増えやすい環境かどうか。
例えば、同じ量の甘いものでも、
- 一度に食べる
- 少しずつ何度も食べる
では、後者のほうが虫歯のリスクは高くなります。口の中に常に虫歯菌のエサがあるので、歯を溶かす酸も多くなるためです。
また、乳歯は永久歯に比べて歯の質がやわらかいため、虫歯になりやすく進行しやすい特徴を持っています。
初期の虫歯は痛みがほとんどなく、歯の溝や歯と歯の間が黒っぽく見える程度のことも多いため、よく観察することが大切です。
知っておきたい「虫歯菌の母子感染」
幼児期の虫歯予防の話題でよく耳にするのが「母子感染」です。虫歯菌が移るから、口移しや食器の共有はしないように、と聞いたことがあるのではないでしょうか。
特に注目されるのが、「感染の窓」と呼ばれる時期。これは、おおよそ1歳半頃から2歳半頃までの、乳歯の奥歯(臼歯)が生えそろい、虫歯菌が口の中に定着しやすい時期を指します。この時期に口の中を清潔に保ち、虫歯菌が増えにくい環境を整えることで、虫歯菌の定着を抑えることができると考えられています。
とはいえ、食器の共有やスキンシップを過度に恐れる必要はありません。
それよりも重要なのは、パパ・ママ自身の口腔ケアです。パパ・ママの口の中に虫歯菌が多いと、子どもにも影響しやすくなります。
親子ともに「虫歯菌を増やさない生活習慣」を意識することが、現実的で続けやすい予防につながります。「うつさない」ことよりも、親子共に自分の口の中の虫歯菌を「増やさない」ことを意識する。それが、家庭でできる現実的な虫歯予防です。
家庭でできる虫歯予防・ホームケア
子ども自身に歯みがきをさせるのは、歯みがきに慣れさせるため。汚れを落とすことに期待しないこと。本人に任せられるのは、8歳くらいからといわれていますから、小学校低学年くらいまでは仕上げみがきをしてあげる必要があります。
とはいえ、年齢だけで判断せず、「自分できれいにみがけているか」を基準に考えることが大切です。
歯科では、3か月〜半年に一度の定期チェックを通して、
- みがき残しの有無
- 子どもに合った歯ブラシや歯みがき粉のアドバイス
- 歯ブラシの当て方
- 仕上げみがき卒業のタイミング
などを確認してもらうことができます。
また、年長さんから小学校低学年にかけて生えてくる六歳臼歯(第一大臼歯)は要注意。
この歯は初めて生える永久歯で、乳歯の一番後ろに生えてきます。永久歯でも生えてから2年くらいの間は、歯質が未成熟な「幼弱永久歯」と呼ばれ、非常に虫歯になりやすいのです。

生え始めは歯の溝が深く、歯ブラシが届きにくいため、定期的なクリーニングやチェックが重要になります。家庭では、上の図のように歯ブラシをななめ45°に傾けて歯ブラシがきちんと六歳臼歯に当たっているか確認しながら仕上げみがきをするようにすると共に、歯科医院を上手に頼ることも虫歯予防の大切なポイントです。
まとめ
虫歯予防は、「うつる・うつらない」だけで考えるものではありません。
生活習慣、歯みがき、定期的なチェック――毎日の積み重ねが、将来の歯の健康を左右します。
完璧を目指さなくて大丈夫。
「今日はここまでできた」と、できていることを大切にしながら、無理のないケアを続けていきましょう。
取材・文/那須由枝 編集協力/東京通信社 イラスト/江口修平
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