
4つの笑顔で、こころと生活リズムを整えよう
こころとからだのリズムの話
毎日のふれあいの中で、無理なく子どもの生活リズムを整え、こころの健康を支える方法をお伝えします!
目次
今回の整うキーワードは
「こころの健康を支える4つの笑顔」
忙しい毎日に追われて、最近、笑顔が減っているかも?
おうちのかたの笑顔は、お子さんのこころの栄養。
早稲田大学人間科学学術院教授・医学博士の前橋 明先生に、お子さんの生活リズムと親子のコミュニケーションについてお伺いしました。

前橋 明(まえはし あきら)先生
早稲田大学人間科学学術院教授・医学博士
乳児期からの子どもの睡眠時間や朝食、排便、体温、運動量などを体系的に調査・測定・分析し、子どもたちの抱える心身の問題とその解決法を探る研究を行う、子どもの健康福祉学の専門家。
1日4回。このタイミングだけは必ず笑顔でお子さんに接する習慣を
「おはよう」「いってらっしゃい」「おかえり」「おやすみ」。1日4回訪れる親子の挨拶のタイミングに、笑顔を心がけてほしい——。毎日が忙しいおうちのかたに、私はそうお話ししています。
いくら生活リズムを整えようとあれこれ取り組んでも、おうちのかたが怖い顔ばかりしていたら、お子さんのこころのリズムが整いません。お子さんにとって、おうちのかたがそばにいると、それだけで安心できるもの。さらに笑顔が見られれば、こころの栄養補給までできるのです。
早寝・早起きや外あそび、朝ごはんをしっかり食べるなどの生活習慣を、気持ちよく、機嫌よく身につけるためには、笑顔のコミュニケーションも大切に。まずは毎日、4つの笑顔を意識することからはじめてみましょう。

寝る前のルーティンづくりもオススメ
笑顔で「おやすみなさい」を伝え、早寝を習慣化するためには、寝る前のルーティンが有効です。テレビやゲームは早めに終わらせる、必ず絵本を読む、抱っこタイムを設ける、今日の出来事を話すなど、光刺激を遠ざけ、静かにいっしょに過ごせれば、親子のコミュニケーションの時間にもなります。
反対に、「早く寝なさい!」と叱りながら寝かしつけると、不安で眠りにつきにくくなり、朝もすっきりと起きられません。笑顔で「いい夢を見てね」「また明日もあそぼうね」とやさしく伝えれば、安心感につながり、入眠しやすくなります。何より、寝る前におうちのかたといっしょにいられる喜びに、お子さんもきっと笑顔になるはずです。
親子でふれあう時間を持つ大切さ
4つの笑顔は、親子のふれあいの大切さについて考えるきっかけでもあります。
私は小さい頃、祖母が保育園の送り迎えをしてくれていました。秋の田んぼで頭を垂れる稲穂を見て「大きく育ててくれた太陽に感謝しているんだよ」と祖母が話してくれたことを、大人になってもよく思い出します。歩いて園に向かう短い時間のことですが、このときのささやかな会話は、私の中に積み重なっています。
1日5分でいいから散歩をする。家の中でよいので親子で体操をする。まぜるだけでもいいからいっしょに食事をつくってみるなど、少しでも親子でふれあう時間をつくれるといいですね。毎日続ければ、それは膨大な時間となり、お子さんの人間形成につながっていきますよ。
こころの健康を支えるのは笑顔と励まし
子どものこころの健康のために、もうひとつお伝えしたいのが、励ましの言葉がもつ力の大きさです。子どもはよく「見て見て~」と話しかけてきます。そんなときは真剣に見て「がんばったね」「よかったよ」と必ず一言添えてあげましょう。上手なところやよい点はオーバーなくらい、思い切りほめてあげてください。
子どもだって、できないことはしたくないし、新しいことに挑戦するのには勇気がいります。でも、おうちのかたが「大丈夫」「できるよ」と励ましてくれたり、努力そのものをしっかりほめてくれれば、ネガティブな気持ちは薄れていきます。
気づいてあげること、そして、お子さんの力を信じて言葉をかけることを、ぜひ実践してみてください。
親も子も忙しい時代だからこそ
昨今の子どもたちは忙しく、成長につれて勉強や習い事、部活動などに追われ、親子のふれあいの時間はぐっと少なくなります。ただでさえ子どもたちはスマホやタブレット視聴にとらわれ、3次元の世界の会話やあそび、体験のおもしろさになかなか気づいてくれません。それでも大人が本気を出して相撲や取っ組み合いの相手をすれば、お子さんは目をきらきらさせながら、汗だくになって、何度も向かってくるでしょう。
大人が夢中になれば、お子さんは必ず真似をします。疲れるから、面倒だからと関わらないのはもったいない。子どもが子どもでいられる期間は短いものです。
忙しいからこそ、親子でできることやふれあいの時間をより意識し、工夫することで、今だけの豊かな体験をつくり出していきましょう。
生活リズムを整えるための前橋先生オススメのあそび
空間認知能力を育む体験を
長時間テレビやゲーム、タブレット視聴をするお子さんが増えています。そして、体験が2次元の世界に偏ってしまうことにより、転んでも手がつけなかったり、ボールが飛んできたときにうまくキャッチできなかったりと、3次元の世界の距離感がうまくつかめない子も増えています。つまり、空間認知能力が育っていないのです。
うちの子は大丈夫かしら? と思ったら、ジャングルジムで遊ばせてみましょう。這う、くぐるなどの3次元的な動きが自然とでき、頭をぶつけないよう常に枠の位置を意識しながらからだを動かす体験ができます。さらに、お友だちといっしょに遊ぶことができれば、登る速さを競ったり、「高おに」をしたりと、あたまもこころもからだも存分に使うことができます。ジャングルジム以外にも、外あそびは空間認知能力を育むチャンスにあふれています。
やってみて!あそび紹介
ジャングルジムでつたい歩き
ジャングルジムに登り、周囲をつたい歩きで1周します。
体の前後を反対にして(背中をジャングルジム側にして)周るのもチャレンジしてみて!

イラスト/小林直子 文/池田恵子 編集協力/KANADEL
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