第1回:体温を上げると元気に動ける
こころとからだのリズムの話
コツをつかめば、意外とスムーズ!?
今回は、生活リズムを整えるコツを、早稲田大学 人間科学学術院教授・医学博士の前橋 明先生
におうかがいしました。
これから就学を迎える年長さんはもちろん、お子さんの生活リズムが気になるかたも必見です!
前橋 明(まえばし あきら)先生
早稲田大学教授・医学博士
子どもの健康福祉学の専門家。日本やアジア各国で講演や運動指導を通して幼児の健康を支援する活動を行っている。
理想の体温サイクルを知りましょう
体温は24時間一定ではない、ということをご存知でしょうか。体温は、眠っている夜中の午前3時ごろに最も低くなり、日中の午後4時ごろに最も高くなります。お子さんの生活リズムを整えるには、まずこの理想の体温リズムを意識することが大切です。朝起きた後に体温が上昇していけば、脳とからだが正常に動き出して元気に過ごせますが、体温が上がらないと、ボーッとしたり、遊ばずにじっとしていたり、情緒が不安定になったりします。体温リズムが正常かどうかは、子どもたちの元気をはかるバロメーターでもあるのです。
いつの間にか夜型生活になっていませんか?
共働きのご家庭が増えたこともあり、昔に比べると夕飯をとる時間帯が遅くなったと思いませんか? 19時以降に夕食を食べ始める子どもの多くが、就寝時刻が22時過ぎというデータもあります。また、日中の運動不足によって、夜になっても元気、テレビやタブレットの光刺激でなかなか眠れないなど、現代を生きる子どもたちには夜型生活が定着しがちです。遅寝・遅起きが習慣化すると、体温のリズムが数時間後ろにズレ込んでしまいます。このズレは、子どもたちの生活と成長にネガティブな影響をもたらすことを、まずは知ってください。
体温を上げるために朝食を食べましょう
では、夜型になってしまった場合、お子さんの生活リズムをどう整えるのか。まずは朝の光を浴びて、朝食をしっかり食べることが、生活リズムを整えるのに有効なトリガーであるといえます。朝食を食べると、消化器官が動き出すことにより熱が発生して、体温が上がります。さらに朝食の後、通園や通学で歩くとさらに熱が生まれます。眠っている間に低くなっていた体温を、目覚めた後の朝食と運動で上げていくのです。逆に言えば、朝食を抜くと体温が上がりにくく、ウォームアップが足りない状態で日中を過ごすことになります。それは、子どもがあそびや学びに全力で向かうことができないことを意味します。体温を上げて、日中は元気に動く。そのために朝食は必ずとることをまずは徹底してみましょう。
生活リズムは一つ変えれば全部よくなる
生活リズムを改善しようとするとき、今の生活をガラリと変えようと思うと大変です。例えば、「朝食は必ずとる」という、1つの習慣を変えてみましょう。生活は一連の流れであり、一つの変化がすべてに連鎖していくため、1点突破すれば全面改善が実現します。朝食をとることのほかにも、朝起きたら太陽の光を浴びる、昼間、外で遊ぶ時間をつくる、夕食の時間をちょっと早くする……など、これならできるかも!というところから、少しずつ始めてみませんか。もし失敗しても、改善できそうなほかの1点を試してみましょう。今の子どもたちにとって、朝起きて、日中よく動き、夜眠るという当たり前の生活は、意識しなければできなくなってきています。大人が意識するだけで、変化は生まれるはずです。
生活リズムの改善を始めるなら、入学前の秋ごろから
小学校生活を意識した生活リズムづくりを始めるなら、お子さんが変化に無理なく適応できるように秋ごろから取り組むのがオススメです。例えば、早寝・早起きを実践するといっても急に早寝はできませんから、少しずつ時間を早めたり、就寝のルーティンを作ったり、今の生活から無理のない範囲で計画を立ててみましょう。もう入学まで時間がないという場合は、最低でも2週間前から始め、毎日同じ時刻に起き、同じ時刻に寝るようにし、朝は朝食から準備をして、出かけるまでの流れを実践してみるとよいでしょう。
前橋先生の運動知恵袋①
こころとからだを整えるには、からだを存分に動かすことも重要です。
そこで、前橋先生に、日常生活の中に取り入れやすい運動について、うかがいました
5分の散歩も立派な運動習慣
子育て中のおうちのかたに外あそびや追いかけっこなどの運動をおすすめすると、「なかなか時間がとれなくて」と少し困った顔をされます。そんなとき、私は「5分の散歩でいいのです」とお伝えしています。例えば、お母さんが朝食を準備している間に、お父さんと家のすぐそばを散歩する。買いものに徒歩で出かけて、荷物持ちを頼んでみる。いつもは自転車で通園するけれど、半分だけ徒歩にしてみる。こんな具合に、生活の中で無理なく取り組める運動を意識してみてください。歩くことは運動の基本ですから、歩くだけで基礎体力が向上しますし、外に出る回数が増えれば、自分であそびを見つけるようになるでしょう。まずは5分から。外あそびのきっかけを、たくさん用意してあげてください。
やってみて! 家の中でできるあそび紹介
タオルに結び目をつくり、それを子どもがキック!
どんどん高くすれば、どこまで届くかチャレンジしたくなります。
イラスト/小林直子 文/池田恵子 編集協力/KANADEL
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