
プロが教える! 子どもの事故原因と事故を防ぐ工夫
子どもの安全・防犯
子どもにありがちな事故パターンをベースに、ヒヤリハットの事例と、その防ぎ方を考えます。
目次
家の中や身近な場所で起こる、子どもの事故。「まさか、こんなことで」「ほんの一瞬目を離したスキに」——そんなヒヤリとした経験をお持ちのかたも多いのではないでしょうか。
子どもは成長にともなって好奇心が旺盛になり、急速に行動範囲が広がっていきます。しかし危険を予測する力が十分に育っていないアンバランスな状況が発生します。これが事故につながりやすい理由です。だからこそ大切なのは、事故の起こりやすいパターンを知り、特に幼児の場合には、大人が先回りして未然に事故を防げるよう環境を整えることと、発達段階に合わせて子どもにも話をし、子ども自身にも危険への意識を高めることです。
日本こどもの安全教育総合研究所理事長の宮田美恵子さんにお話をうかがいました。

宮田美恵子さん
特定非営利活動法人
日本こどもの安全教育総合研究所理事長
子どもの事件・事故をはじめ、交通・自然災害に関する0歳からの安全教育、障害のある子どもの安全教育、さらに保育園・学校の安全管理に取り組んでいる。新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどでも解説。「学校安全のリデザイン~災害、事件、事故から子どもたちを守るために~」(学事出版、2022年)をはじめ、著書も多数。
統計で見る子どもの事故の原因で多いのは? おうちの中に潜む「ヒヤリハット」
まず、統計データから子どもの事故の原因は何が多いのか見ていきましょう。下の円グラフは平成30年から令和4年の人口動態調査をもとに、事故による子どもの死因と死亡率を調べたものです。子どもの事故による死因は交通事故が26.9%、そして不慮の窒息や溺水、転倒・転落といった家庭内での事故が実に6割を超えています。未就学児の不慮の事故は、交通事故を除けばその大半がおうちの中で起きているということですね。おうちの中は慣れた場所だからこそ、大人の気がゆるみやすい一方で、子どもにとっては「発見」と「挑戦」の宝庫でもあるのです。

子どもの安全教育を長年研究してきた宮田美恵子先生は、未就学児の事故防止について次のように話します。
「この時期の子どもは、興味のあるものを見つけると、それに向かって一直線に行動します。危ないかどうかは、まだ判断できません。だからこそ大人が、子どもの行動を予測し、二重三重に安全対策を重ねることが大原則です」
ここからは、子どもの不慮の事故の原因として多い窒息・誤飲、溺水、転倒・転落、やけどなどがについて、よくあるヒヤリハットと未然に防ぐためにやっておくとよいこと、もしもの場合の対応を見ていきましょう。
家庭内でのヒヤリハット1:窒息・誤飲は身近なもので発生
よくあるヒヤリハット
- ボタン電池や磁石、おもちゃの小さな部品を飲み込んだ!
- コードやブラインドのひもなどが首に絡まりそうになった!
- 食べ物がのどに詰まった!
- ドラム式洗濯機の中に入り込んでしまった!
他にも、医薬品や化粧品、お酒やたばこの誤飲、包装フィルムやシールでの窒息などにも注意が必要です。
未然に防ぐポイントは?
- 口に入る大きさの物は子どもの手に届く場所に置かない
- おもちゃは対象年齢を必ず確認する
- お菓子の個包装フィルムや袋留めシールがついている物、軽いプラスチック容器などであそばせない
- 洗濯機にはチャイルドロック機能の利用など、子どもが入らないように工夫する
- 「静かすぎる」は要注意のサイン! 何をしているか確認すること
もしものときの対応は?
窒息はもちろん、医薬品や洗剤などの誤飲は、重大な症状を引き起こすおそれがあります。疑いのある場合はすぐに医療機関にかかりましょう。
家庭内でのヒヤリハット2:溺水事故は数センチの深さでも起きる
よくあるヒヤリハット
- 浴槽のふたによじ登って風呂水の中に落ちた!
- 転んで洗面器やバケツに残った水に顔を突っ込んだ!
- 踏み台を持ち込み洗濯機の中をのぞき込んでいた!
浴室やトイレは水があり、滑りやすくなっています。「少しの水なら大丈夫」と思いがちですが、溺水事故はほんの数センチの水深でも起こります。トイレの便器の溜め水も例外ではありません。
未然に防ぐポイントは?
- 入浴後は必ずお湯を抜く
- 防災対策などで溜め水をする場合は、子どもが一人で洗面所や浴室に入れない工夫をする
- 大人との入浴の際でも、大人が洗髪している間は浴槽から出す
- 風呂から上がる際は子どもを先に浴槽・浴室から出す
もしものときの対応は?
溺水は一刻を争います。ためらわず119番通報を。
家庭内でのヒヤリハット3:転落・転倒の危険、子どもにはイメージできず

よくあるヒヤリハット
- ベランダから下をのぞこうとして足場を探している!
- ソファやベッドの上で跳ねていて端から落ちた!
- タンスの引き出しを階段のように使って登ろうとしている!
未就学児は「見たい」「やってみたい」という気持ちがとても強く、禁止されると余計に興味を持つこともあります。さらに、年中・年長頃になると椅子を運んだり、踏み台を探したりする力や知恵も十分についてきます。大人には「まさかここまでしないだろう」と思えることでも、子どもにとっては自然な行動なのです。
未然に防ぐポイントは?
- ベランダや窓の前には足場になりそうな物を置かない
- 窓や扉は子どもの手の届かない場所にも鍵を取り付け二重化する
- タンスや棚は壁に固定し、引き出しにはストッパーを付ける
- ベッドやソファと窓の位置関係を見直しよじ登りを防止(難しければ柵などで対策)
もしものときの対応は?
頭を強く打った場合は、元気そうでもしばらく様子を見ましょう。
嘔吐、ぐったりする、意識がぼんやりするなどの症状があれば、迷わず医療機関へ。
家庭内でのヒヤリハット4:やけどの原因となるキッチン・ストーブ・アイロンに注意
よくあるヒヤリハット
- 鍋やフライパンの取っ手を引っ張り、中身をかぶってしまった!
- 炊飯器やポットの蒸気口やボタンに触ってしまった!
- アイロンやストーブに不用意に近づいた!
3歳程度になると、キッチンではたいていのものに手が届きます。その前提に立って、「なにかあっても大事故にならない配置」を考えることが大切です。
未然に防ぐポイントは?
- ゲートを設置し、調理中のキッチンやストーブ周りには入れない工夫をする
- コンロは奥の火口を使う
- 鍋の取っ手は必ず奥側へ向けておく
- 包丁などの危険なものは放置せず、ロックがかかる場所にしまう
屋外での事故:交通事故の危険は道路だけでなく、駐車場や公園でも
よくあるヒヤリハット
- 公園あそび中、ボールを追って道路へ飛び出しそうになった!
- 反対側の歩道から声を掛けられて飛び出していった!
- 駐車場で車のそばにしゃがみ込み、ひかれそうになった!
- 車の下に隠れて遊んでいたら、ひかれそうになった!
- 公園や商業施設で見失ってしまった!
小さな子どもが意識できるのは「自分」と「興味の対象」の2つ程度です。道路の向こう側からパパが手を振っているのを見たら、周りを見ずに一目散にかけていく、ボールが転がっていったら車道でも飛び出していく、「〜なるかもしれない」と考えて対応する必要があります。
未然に防ぐポイントは?
- 手が届く位置、また公園などでは出入り口付近で見守る
- 外では必ず手をつなぐ
- 駐車場では抱っこ、または手つなぎを徹底
- 遠くから声かけしない
- 迷子対策として…名前を言う練習をする/目立つ服装をさせる/集合場所を事前に決めておく
こまめな声かけで、子ども自身の安全意識を高める
子どものさまざま事故を未然に防ぐには、環境を整えるだけでなく、子ども自身に意識させることも大切です。
「ここは熱いから気をつけてね」「落ちたら痛いよ」などと声をかけましょう。
今すぐ理解できなくても構いません。くり返し聞くことで、子どもの中に少しずつ積み重なっていきます。
家庭での声かけそのものが、安全教育になります。
特に年長から小学校低学年頃は「安全を教えるチャンスの時期」と言えます。
この時期の子どもは、大人の言うことを守ろうとする力が育ってきます。くり返しの声かけが、少しずつ “自分を守る力”につながっていきます。
子どもの事故は、どの家庭にも起こり得ることです。子どもは思いもよらない行動で大人をふるえ上がらせるもの。大人の常識は通用しません。大切なのは、想像力を働かせて危険を察知すること、環境と習慣で事故を防ぐことです。安全への意識は、成長とともに形を変えながら続いていくものです。ただ、子どもが幼く、目が離せずに細かな対策が必要な時期は、ずっと続くわけではありません。今は大変に感じるかもしれませんが、成長とともに少しずつ手が離れていきます。一時期のことと考えて、使えるグッズや仕組みも上手に活用しながら、無理のない形で取り組んでいきましょう。子どもの命と、保護者の心の余裕を守るために。
今日できる一つの見直しが、明日の安心につながります。
文/那須由枝 イラスト/シュクヤフミコ 編集協力/東京通信社
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