未就学児の防犯教育 ~シチュエーション別のポイントと家庭でできる防犯の練習~

未就学児の防犯教育 ~シチュエーション別のポイントと家庭でできる防犯の練習~

子どもの安全・防犯

未就学児の防犯教育について、シチュエーション別のポイントと、親子でできる防犯の練習方法を専門家にうかがいました。

子どもの防犯というと、「知らない人にはついていかない」「声をかけられても無視する」といったことを思い浮かべるかたが多いかもしれません。もちろんそれは重要ですが、未就学児の場合、それだけでは十分とは言えません。なぜならこの時期の子どもは、「相手が危ない人かどうか」を自分で判断することがまだ難しいからです。

未就学児の防犯教育は、周囲の大人が安全な環境を整えることが大前提ですが、一方で子ども自身に「自分がイヤだと感じたことは、相手が誰であっても伝えてよい」と理解させることが大切です。
今回は、日常の中で起こりやすい3つのシチュエーション別のポイントと、「断る」「助けを求める」「その場を離れる」といった家庭できる防犯の練習をご紹介します。教えてくださったのは、日本こどもの安全教育総合研究所理事長の宮田美恵子さんです。

宮田美恵子さん

宮田美恵子さん

特定非営利活動法人
日本こどもの安全教育総合研究所理事長 博士(医学)
子どもの事件・自己分析をはじめ、交通・自然災害に関する0歳からの安全教育、障害のある子どもの安全教育、さらに保育園・学校の安全管理に取り組んでいる。新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどでも、さまざまな防犯活動について解説。「学校安全のリデザイン~災害、事件、事故から子どもたちを守るために~」(学事出版、2022年)、「クイズでたのしむ あんぜんえほん」(幻冬舎、2023年)、「ゆうかいするのはどんなひと?」(埼玉福祉会、2022年、 生活安全紙芝居)をはじめ、著書も多数。

未就学児の日常で起こりやすい3つのシチュエーション その1:抱っこ 

未就学児が日常的に経験するものの1つに、「抱っこ」があります。抱っこに関して、子どもに予め伝えておきたいことと、具体的に家庭でどのように声をかけるのがよいかをお伝えします。

「抱っこ=応じなければいけない」ではない

知っている人から「おいで」と手を広げられると、子どもは抱っこに応じなければいけないと感じてしまうことがあります。
しかし、子どもにとって抱っこは「してもらうかどうかを自分で決めてよいもの」。たとえ相手が知っている大人であっても、「今はイヤだな」と感じたら、無理に応じる必要はないと伝えてあげましょう。

家庭でできる声かけ例

  • 「抱っこする? それとも手をつなぐ?」
  • 「イヤだったら“イヤ”って言っていいんだよ」

こうしたやり取りを日常的に重ねることで、子どもは「選んでいい」という感覚を身につけていきます。
また保護者自身も、子どもが「イヤ」と言ったときには尊重することが大切です。この経験が、「言えば伝わる」「イヤなことはやめてもらえる」という安心感につながります。
ただし、道路を歩くときなど、安全を守るために手をつなぐ必要がある場面では、その理由を伝えながら大人がしっかりと導くことも大切です。

未就学児の日常で起こりやすい3つのシチュエーション その2:くすぐり 

また、未就学児との間でよくやるあそびの一つにくすぐりがあるかと思いますが、こちらも注意が必要です。

「楽しいあそび」もやりすぎてしまうと、イヤな体験に変わることも

くすぐりは親子のスキンシップの一つですが、盛り上がるほど「やりすぎ」になりやすい場面もあります。子どもが「やめて」と言ったらストップしましょう。そのまま続けてしまうと、「イヤと言ってもやめてもらえない」という“無力感”“あきらめ”につながります。逆に自分の意思を尊重してもらうことで、子どもは自信がつきます。また、尊重してくれた人への信頼感が増し、その人の言うことを受け入れやすくなります。

大切なのは“大人がお手本になること”

  • 子どもが「やめて」と言ったら、大人は必ずストップ
  • 子どもにもほかの人に「やめて」と言われたらやめてあげることが大事!と伝える

家庭の中であえて「やめる練習」を取り入れるのも効果的です。
「やめる練習」は特別なトレーニングではなく、日常のあそびの中で取り入れることができます。大切なのは、誰かが「やめて」と言ったときに必ずストップすること。その積み重ねが、気持ちを尊重する意識につながります。

未就学児の日常で起こりやすい3つのシチュエーション その3:写真撮影 

写真に関しても、日ごろから下記のような意識を持って、予め子どもにも伝えておきましょう。

写真は「撮られる側のOK」があってはじめて成立する

スマホやカメラをかまえているのが親族や知り合いでも、子どもが「今は写真を撮られたくない」と感じる場面はあります。また近年は、撮影した写真がSNSなどで広く共有され思わぬ事態につながることもあり、写真の扱いにはより注意が必要になっています。

子どもに予め伝えておきたいこと

  • 写真を撮っていいのは、パパ・ママやじぃじ・ばぁばなど親しい決まった人
  • 写真は「撮られていいか」を自分で決めていい
  • イヤなときは「イヤ」と言っていい

「家族はいいけれど、それ以外の人は断っていい」といったルールをシンプルに伝えておくと、子どもも理解しやすくなります。知らない人に写真を撮られたら教えてね、と伝えておくとよいでしょう。
また、子どもの写真をSNSに掲載することは、危険と隣り合わせの行為です。その子の行動や生活が読み取れ、誘拐など犯罪の手がかりになることもあります。じぃじ・ばぁばともルールを決めて、共有しておくと安心です。

親子でできる防犯教育:断る練習

“短い言葉”でOK。いざというとき、長い説明は必要ありません。大切なのは、シンプルに伝えることです。
おすすめは、

  • 「イヤだ」
  • 「やめて」

といった短い言葉です。
言葉が出にくい場合は、

  • 手のひらを前に出す
  • 一歩下がる

といった動作も有効です。
親がきちんとその言葉を受け止めることも大事です。子どもがためらわず「イヤ」と言える環境が、いざという時の行動にもつながっていきます。

親子でできる防犯教育:その場を離れる練習

少しでも「なんかイヤだな」「怖いな」と感じたら、その場から離れていいことを教えておきましょう。

  • その場から少し離れる
  • パパママ、園の先生など、安心できる大人のところへ行く

といった行動を、日常の中で意識づけておきましょう。
例えば、パパの抱っこに飽きてきた子どもに
「あそびたくなったら、『もう抱っこはやめて』って言って、くまちゃんとあそんできていいのよ」
とママが助け舟を出してあげるというのもいいでしょう。

親子でできる防犯教育:助けを求める練習

声を出すことは“練習しておきましょう。
「助けて」と大声で言うのは、大人でも難しいものです。特に子どもにとっては、相手が大人だとさらに言いづらくなります。
だからこそ、あらかじめ練習しておくことが大切です。

家庭でできる練習例

  • 「助けて!」と声に出す練習
  • 大きな声を出すあそび(かくれんぼ・鬼ごっこなど)
  • 防犯ブザーを鳴らす(止める)練習

「本当にイヤだと思ったときは、間違ってもいいから助けを求めていい」と伝えておくことが重要です。子どもなりに大声を出したりブザーを鳴らしたりすることにはためらいがあります。
「この人が悪い人じゃなかったらどうしよう?」
「間違っていたらイヤな気持ちになるんじゃないかな?」
もしも間違っていたときには親が謝ればいいことです。むしろ勇気を出して行動したことをほめてあげるべきでしょう。「間違ってもいい」という一言が、子どもの行動のハードルをぐっと下げてくれるはずです。

また、防犯ブザーの使用については、“いつ使うのか”まで一緒に教えておきましょう。
さらに、買い物や散歩の際に交番や店舗、「こども110番」などの「助けを求められる場所」を一緒に確認しておくことをお勧めします。

  • 「こども110番を見つけたらママにも教えてね」
  • 「困ったらこのおうちに入ろうね」
  • 「クリーニング屋さんのおばさんに助けてって言おうね」

などと親子で話し、実際に子ども110番をやってくれている地域のかたやお店の人と、親子でいるときに一緒に話して、いざというときに子どもが助けを求めやすい関係を作っておくことも大切です。

まとめ 「イヤ」を伝える力が、自分を守る力になる

未就学児にとっての防犯は、特別な知識を覚えることではありません。

  • イヤだと思ったらイヤだと言っていい
  • 困ったら助けを求めていい
  • その場から離れていい

こうしたシンプルな行動を、日常の中で少しずつ身につけていくことが大切です。
そしてもう一つ大切なのは、大人がそのサインに気づき、守ること。
大人の見守りと、家庭での小さな練習の積み重ねが、子どもの「自分を守る力」を育てていきます。
「ちゃんとできるかな」と心配しすぎなくても大丈夫です。あそびの延長で取り入れた小さな習慣が、いざというとき、子どもを守る大きな力になります。

COLUMN ~プライベートゾーンとパーソナルスペース〜

プライベートゾーン(体の大事なところ)

体には、性にかかわるとても大事なところがあります。それが「プライベートゾーン」です。口やお尻、水着で隠れるところは、ほかの人が勝手に見たり、触ったりしてはいけないと教えてあげましょう。
パパ・ママ、先生などお世話をしてくれる人以外が、見ようとしたとか触ろうとしたときは「いやだよ」と言っていいこと、「こんなことがあった」と教えてほしいと伝えましょう。

パーソナルスペース(心と体の距離)

人には、それぞれ「ちょうどいい距離」があります。これを「パーソナルスペース」といいます。パパ・ママとはぴったりくっついていていいけど、お友達とは腕一本分がちょうどいい距離と言われています。
近すぎると、怖かったり、不快に感じることがありますね。子どもも同様です。そんなときは、「ちょっといやだな」「やめて」と言っていいよと伝えましょう。

文/那須由枝 イラスト/シュクヤフミコ 編集協力/東京通信社

SHARE!

  • LINE
  • X(旧Twitter)
  • Facebook

TOP