前号までのあらすじ
奏太の計らいでドラマーの緒方くんと三人で演奏することができたが、その後何の進展もないままだった。ところが、緒方くんが奏に「話したいことがある」と言ってきて……。
とまどうわたしに背を向けて、緒方くんは歩き出した。しかたなく、後を追う。人気のない廊下のつきあたりのところで、彼は足を止めた。
なんなんだろう、一体。
「そいつ、奏のこと好きなんじゃない?」
さっきのハルカの言葉が頭をよぎる。いやいや、そんなわけない。
でも、ドキドキする。
変なの。緒方くんって、どちらかというと苦手な人なのに……。
「ごめん」
突然の意外な言葉に、思い切り面食らった。何が?
「なんか、いろいろ嫌な言い方して」
急な展開についていけず、だまっていると、緒方くんは重ねて謝ってきた。
「ほんとにごめん。上野さんが怒るのは無理もないと思うけど……」
「そ、そんな、怒ってなんかないよ。急にどうしたの?」
そりゃあ、正直に言ったら、緒方くんの言葉には何度もムッとしたけど。でも、こんなふうに謝られると、どうしていいのかわからなくなる。
「ぼく、5歳からドラムやっているわりには、あんまりうまくないんだ」
「えっ?」
「ぼくよりずっと後から始めたのに、うまいやつがたくさんいて」
「そうなの?」
「うん。うちは父さんがもともとミュージシャンだし、今もああいう仕事をしているから、ものすごく環境が整っているのに、ぼくはずっとへたくそで……」
びっくりした。
こないだは全然そんなふうには見えなかった。ベースを始めたばかりのわたしに、ドラムのうまい、へたなんてとうていわからないけど、左右の手足が別々にあちこちに動いていて、すごいなあと感心していたから。
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