
子育て世代必見!親子一緒に考えたい お金のハナシ 後編
元校長先生が聞く ○○のハナシ
第4回 金融教育家 横川 楓さん× 元東京都公立小学校校長 山田正樹先生
「ポピー教育対話主事」の先生方が、様々な分野で活躍中の方をインタビューするこの企画。いつの時代も、親にとってお小遣い問題は悩ましいもの。どのくらいの金額を、どのように渡す? すぐに取り組める専門家のアドバイスを紹介します。

横川 楓(よこかわ・かえで)さん(やさしいお金の専門家/金融・経済アナリスト)
1990年、東京生まれ。明治大学法学部卒、その後明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科へ進学。24歳で経営学修士(MBA)を取得。大学院卒業後、2015年にお金の知識の啓発活動を開始。一般社団法人日本金融教育推進協会代表理事。
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山田正樹(やまだ・まさき)先生 (ポピー教育対話主事)
東京都出身。東京学芸大学卒業。小学校教員として40年間にわたり子どもたちとかかわる。小平市で副校長・校長として学校経営も 行う 。専門は算数教育。ICT機器の教育への利活用にも積極的に取り組む。令和3年4月より、全家研 ポピー 教育対話主事に就任。インスタライブや動画での情報発信、教育講演会など活躍中。
後編 すぐに取り組める! おうちの金融教育

お小遣いはどう渡す?
山田 お金といえば、子どもたちが連想するのは、お小遣いですね。保護者会でも、必ず話題になります。
横川 お小遣いは、おうちでできるお金のトレーニング。もちろん、金融教育の一つです。将来、上手にお金と付き合えるように、お小遣いで練習させたいですね。
山田 まず、渡し方ですが、定額制かお駄賃制、ズバリ、どの方法が良いと思いますか?
横川 どちらでもよいと思います。家庭によって考え方やルールは違うものだし、正解はないと思います。定額制+ボーナス(ご褒美)というハイブリッドな方法もあるようです。
山田 よく聞くのが、通知表の成績やテストの点数が上がると、お小遣いをもらえるという話です。お小遣いをもらうことが目的になってしまうのはどうかなあ…とも思うのですが…。
横川 私は、それもアリだと思います。お小遣いアップのために勉強を頑張ろうと思って、モチベーションが上がるならOKではないでしょうか。
山田 成績が上がったとき、ただお金を渡すのではなく、「目標に向かって頑張れたことが、すごいね」「いろいろな知識を吸収できたね」など、親から一言あるといいのかもしれません。
横川 それはいいですね。
山田 勉強を頑張った達成感や自信、知識が身についたことなど、お金以外に得たものもあるよと気づかせてあげることがポイントですね。
横川 上限を決めることも大切です。限られた範囲の中でどうやりくりするか、考えることにつながります。
山田 お小遣いの金額も、よく話題に上ります。目安はありますか?
横川 住んでいる地域や環境、欲しいと思うものによって、その子にとって必要な金額は違います。おうちの人の考え方や価値観もあるので、これにも正解はないと思います。ぜひ親子で話し合ってください。

お金が足りないとき、どうする?
山田 お金をやりくりする経験も大切ですね。
横川 その通りです。連載やイベントでは、「ほしいものがあるけれど、お金が足りないとき、どうする?」と問いかけ、子どもたち自身に考えさせます。

山田 買うのを諦めて我慢する、コツコツとお金を貯める、おじいちゃんやおばあちゃんに買ってもらう…、いろいろな意見が出そうですね。
横川 私は、一つの方法として「自分の気持ちや考えを伝えて、親と交渉してみたら?」と子どもたちにアドバイスします。
山田 子どもの目が輝きそうですね! ワークショップの後、自分なりに作戦を練って交渉する子もいるでしょう。

横川 「自分は〇〇のためにお金を使いたいから、お小遣いがほしい」と自分の気持ちや計画の意思表示をすること、そして親子でお金の使い道を話し合うことがポイントです。
山田 子どもにお金の話をするなんて…と金融教育に否定的な意見もありますが、やはり話しておくべきですね。
横川 もしお金について親子で話し合った経験がないと、いざ大人になってお金のトラブルが起きたときに、親に相談しにくくなったり、一人で抱え込んでしまったりするかもしれません。
山田 それは困りますね。
横川 お金とは一生つきあっていくものですから、自分は何にお金を使いたいのか、どんなふうにやりくりをして、必要なお金を得るのか。お金と向き合うことは、人生の価値観や生き方にもつながっていくと思います。
ストップ・ザ・3日坊主! お小遣い帳のコツ
山田 私にも経験がありますが、お小遣い帳は、つい3日坊主になってしまいがちです。どうしたらよいのでしょうか。
横川 昔ながらのお小遣い帳のつけかたも指導しますが、おすすめはスマホのアプリです。自動で計算してくれるので、面倒くささを解消できます。
山田 小学生では、スマホを持っている子はあまりいないようですが…。
横川 お父さんやお母さんのスマホを使わせてあげてはいかがでしょうか。親は、子どもがお小遣いを何にいくら使ったのか管理しやすいですし、子どものほうも、いずれスマホを使うようになるので、小さいうちから操作に慣れておくメリットがあります。

山田 親子でお金について話し合うことにもつながりますね。小学校では、子どもたちはパソコンの学習をしているので、家のパソコンを使うのもいいかもしれません。
横川 エクセルの表を作って、親子一緒に管理する手もあります。「見える化」するのがポイントだと思います。
山田 キャッシュレス決済も、親のスマホで経験させておいたほうがいいでしょうか。それとも、まだ早い?
横川 ぜひ、今のうちから体験させてあげてください。中学生になると、スマホでPayPayなどのキャッシュレス決済アプリを使う子がグッと増えています。5年後、10年後には、子ども用のキャッシュレス決済の端末が登場し、普及するかもしれませんし…。


山田 子どもにお金の話をするのがイヤだと言っている時代ではないですね。
横川 新NISAも始まり、投資について子どものうちから触れる機会も増えてきました。投資や株価などについても、ぜひおうちで話題にして、少しずつ知識を増やしてあげたいですね。
お金を大切にする子に育てよう
山田 お金を大切にする子に育てるには、どうしたらよいでしょうか。
横川 買い物に連れて行って、お菓子などを選ばせて、自分のお財布で買い物をさせるのがおすすめです。自分のお財布から出したお金は「自分のお金」だと思えるので、大切に使おうという意識も芽生えますから。

山田 そうですね!
横川 私は、お金が足りない経験、使ってなくなっちゃったという経験も大切だと思います。お金の使い方を失敗したときがチャンスです。どうしたらよかったのか、ぜひ親子で話し合ってみてください。
山田 金融教育は「親子で話し合う」がキーポイントなのですね。最後に、今後の夢や目標を聞かせてください。
横川 幼少期からの金融教育を進めていきたいと思います。子どもたちが楽しく学べるようなコンテンツやツールの開発も手掛けてみたいです。
山田 夢は広がりますね。ありがとうございました。