❺ 後伸びにつながる力を育もう ~幼児期に効く! 脳コラム5選
篠原菊紀先生の脳コラム
子どもの後伸びの秘訣は、幼児期から「実行機能」と「社会性・情動のスキル」を高めておくこと。
目次
後伸びにつながる力を育もう
今回は、子どもを幼児期から追跡した調査結果の紹介です。その結果から、『幼児ポピー』が力点を置いている内容の大切さが見えてきますよ。
「実行機能」と「社会性と情報スキル」と「国語力・計算力」の調査
2019年、ペンシルバニア大のシャロン・ウルフらは、ガーナの子ども3862人について、平均5.2歳ころをスタートに、2年おきに調査を行い、実行機能と、社会性と情動のスキル、国語力、計算力の関係を調べた結果を報告しました。
実行機能とは、「計画を立て順序良く物事をこなしていくことができる力」で、それを発揮するには、ワーキングメモリ(作業記憶)の力、すなわち、記憶や情報を一時的に保持しながらあれこれ操作する力が必要です。
社会性と情動のスキルは、よくIQ(知能指数)と対比されるEQ(情動性知能)的なもので、「社会のルールや、他者や自分の心を理解し、適切に対処していく能力」です。
「実行機能」と「国語力・計算力」は相補的関係
その結果、初期(幼児から小学校低学年)の実行機能は、その後の国語力や計算力を予測したそうです。また、初期の国語力や計算力はその後の実行機能を予測したそうです。
つまり、
- 幼児期の実行機能の力、あるいはワーキングメモリの力が強い
➡ その後、国語や算数の成績がよくなりやすい。 - 幼児期に読み書き計算ができている
➡ その後、ワーキングメモリや実行機能の力が伸びやすい
というのです。シャロン・ウルフの言い方を借りれば、実行機能と学業成績は長年にわたって相補的な関係にあるのです。
アカデミックな力をつけると、「社会性」と「情動スキル」も身につけやすくなる
さらに、初期の国語力や計算力はその後の社会性と情動スキルを予測するそうですが、初期の社会性と情動スキルはその後の国語力や計算力を予測しないのだそうです。
社会性や情動スキルはとても大事です。ひとの気持ちを理解する心は必要ですし、伸びてほしい力です。
しかし、トレーニングとしての効率性を考えると(そう考えることが正しいかはいったん置いておくとして)、幼児期では実行機能や学業的な力(シャロン・ウルフは「アカデミックな力」と呼んでいます)を伸ばしておくことがより有効なのです。
アカデミックな力を伸ばすことで、社会性や情動的なスキルを身につけやすくもなっていくというのが、シャロン・ウルフらの研究の示唆するところです。
『幼児ポピー』は、「実行機能」と「情動スキル」を高める工夫を随所に
手前味噌で言わせてもらえば、私が総合監修をしている『幼児ポピー』では、十数年前から非アカデミックな力(社会性や情動のスキル)の基礎にワーキングメモリの力があると考え、そのトレーニングを問題作りの基本に置いています。
さまざまな問題にワーキングメモリトレーニングの要素を忍ばせた上で、非アカデミックな課題にも同様にワーキングメモリトレーニングの要素を忍ばせ、小学校で必要なマナーや社会ルールの学習、読み聞かせを通した心の理解を組み込んできました。
『幼児ポピー』を活用するかどうかはさておき、後々のことを考えると、
幼児期から「実行機能」と「社会性・情動のスキル」を高めておくことが、後伸びの秘訣といえそうです。
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篠原 菊紀(しのはら きくのり)先生
公立諏訪東京理科大学 情報応用工学科教授(脳科学、健康科学)。東京大学、同大学院教育学研究科修了。『頭がいい子を育てる8つのあそびと5つの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。『子どもが勉強にハマる脳の作り方』(フォレスト出版)など著書多数。NHK夏休みこども科学電話相談など、TV、ラジオ、雑誌でもご活躍。
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