勉強に効く!脳コラム10選 ~ ❷「すぐやる脳」をつくるコツ
篠原菊紀先生の脳コラム
「すぐやる脳」をつくるコツ
「やる気が出ない」ということは大人でもありがちですよね。それはなぜか、それならどうすればいいかというのが今回のお話。日々の生活にぜひお役立てください。
「なんだか、やる気が出ない…」
「やらなきゃ」「立ち上がらなきゃ」「始めなきゃ」、そう思いながらなかなか始められない。頭ではわかっていても、身体が動かない。そういうことが多々あると思います。そんなときの脳を調べると、言葉を発する中核である脳のブローカ野と、言葉を聞く中核であるウェルニッケ野、そしてこの二か所を結ぶ神経ループ、弓状束(きゅうじょうそく)が活動しています。はたから見れば、ただぼんやりしている、ただテレビを見ている、そう見えるかもしれません。しかし、脳の中では言葉が渦巻き、少なくとも脳の一部は追い詰められているのです。
「今、やろうと思ったのに」
だから、そんなときに、「さっさと○○しなさい」「○○したの?」などと言われると、「今、やろうと思ったのに」とちょっと切れ気味になったりするのです。
本人は本当に「やらなきゃ」とは思っている。しかし、残念ながら、「やる気」や「意欲」の中核である脳の線条体(せんじょうたい)は発火(神経細胞が活動すること)していない。「やらなきゃ」という言葉は空回り、脳の奥にある線条体に届いていないのです。
やる気の中核・線条体は…
線条体は、大脳基底核(だいのうきていかく)という脳の奥のほうにある神経核の一部で、運動の開始・持続・コントロールなどにかかわります。そして、その線条体の腹側(下側)は、快感の中核、側坐核(そくざかく)を含みます。側坐核は、やる気に関係するドーパミン神経系が強くアクセスする場所で、快感の中核とみなされています。つまり、線条体で行動と快感が結びつくのです。行動と快感を結びつける場が、確かに脳に存在するのです。
だから、子どものやる気を育てたければ、「やるべき行動」「望ましい行動」と、「快感」とを結びつけることです。そしてそれをくり返すのです。
始めようかと立ち上がったら、「その一歩がえらい」。いざ始めたら、「よし、よく始めた」「いい感じ」「すごいね」と。バカみたいと思われるかもしれませんが、このバカみたいなくり返しが大事なのです。
このくり返しで「望ましい行動」と「快感」が線条体で結びつき、「やろうかな」と思っただけで線条体が前倒しで発火するようになるのです。これが「すぐやる脳」をつくる最大のコツです。バカみたいでいいのです。バカみたいにこまかな行動をほめてください。その習慣が「すぐやる脳」をつくり出します。
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篠原 菊紀(しのはら きくのり)先生
公立諏訪東京理科大学 情報応用工学科教授(脳科学、健康科学)。東京大学、同大学院教育学研究科修了。『頭がいい子を育てる8つのあそびと5つの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。『子どもが勉強にハマる脳の作り方』(フォレスト出版)など著書多数。NHK夏休みこども科学電話相談など、TV、ラジオ、雑誌でもご活躍。
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