前号までのあらすじ
絵留がおじいちゃんにもらった懐中時計。そのふたの裏から小さなカードが見つかった。お父さんが確認した結果、その中には予想通りダイくんにまつわるデータが入っていた。
「おじいちゃんが残したデータから、佐藤成一さんが見たという島が実在することがわかった」
お父さんの言葉に、わたしはほっとした。
佐藤さんのお父さんは、やっぱり嘘つきなんかじゃなかった。早く佐藤さんに教えてあげたい。きっと喜ぶだろうな。
「佐藤成一さんが発見されたとき、地元ではちょっとしたニュースになったらしい。結局、島自体が見つからなかったから、だんだん忘れられていったけど、おじいちゃんだけは調査を続けていたんだ」
「おじいちゃんらしいわね」
とおばあちゃんが笑った。
「そうだね」
と懐かしそうに言ってから、お父さんが説明を続けた。
「しばらくの間は、なんの情報も得られなかった。ところが、ある日突然、紫の霧が発生したんだ」
佐藤成一さんが見たのと同じ霧だ。
「その霧の成分については、よくわからないんだけど、非常に不思議な霧らしい。おじいちゃんは、いくつもの珍しい気象条件がぴたりと重なったときに発生するものじゃないかと考えていたようだけど……。しかも、この霧には催眠作用があるようで、浴びると眠くなってしまうから、十分な調査ができなかったらしい」
催眠作用!
それで、佐藤成一さんの記憶があいまいだったり、気を失ってしまったりしていたんだ。
「おじいちゃんのときは、佐藤成一さんよりも短い時間で霧が晴れたらしい。だから、行方不明だと騒がれることもなかったんだけど、丸二日間何も食べずに船で眠っていたことになるのに、お腹もすいていなくて、体調もむしろよくなっていたと書いてあったよ。一週間飲まず食わずだったにも関わらず、発見されたときにまったく衰弱していなかった佐藤成一さんのことを考えると、これも霧の作用なのかもしれない」
なんて不思議な霧なんだろう。
「すべてはおじいちゃんの推測にすぎないんだが、この霧が出ている間だけ、小さな恐竜たちがすんでいる島にたどり着けるようなんだ」
「それで、おじいちゃんはその島に上陸したの?」
ダイくんは本当にその島にいたんだろうか。
「いや、その島の近くへボートをつけて映像を撮ろうとしているうちに、霧の作用で眠ってしまったらしいんだ。そして、目が覚めたとき、上着のポケットの中にダイくんがもぐりこんでいたようだよ」
「えっ?」
わたしとおばあちゃんは、驚いて顔を見合わせた。
ゲージの中で眠っているちび恐竜の姿を見ながら、わたしはダイくんが学校へついてきた日のことを思い出した。好奇心旺盛なダイくんならやりかねない気がする。
「おじいちゃんが目覚めたときにはもう霧が晴れていて、何度探しても島は見つからなかった。それで、まだ小さいダイくんをしかたなく連れて帰ってきたらしい」
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