表示がくずれる場合は、ブラウザの[更新こうしん]ボタンをクリックしてください。
POPY Novels ちび恐竜と絵留の日々
Copy Ban
ちび恐竜と絵留の日々(キョウリュウパークの謎)
第7話キョウリュウパークのなぞ

作: たかはしみか

絵: 井上恵美

前号までのあらすじ

ピクニックに行った帰り道、偶然ぐうぜん見つけた廃墟はいきょと化したテーマパークの中に、ダイくんが入っていってしまう。そこには、中型犬くらいの大きさの恐竜きょうりゅうがいたのだった。

ダイくんは、こわれてところどころひび割れたガラスケースの中にいる、自分とそっくりな姿をした恐竜のまわりをうろちょろしていた。しばらくは名前を呼んでも、まったく聞こえていない様子だった。日本語でも英語でもない、なんとも言えない小さな声で、ケースの中の恐竜に必死に話しかけているように見えた。

直也なおやがダイくんの様子がおかしいって言ったのは、このことか。いったい、どうしちゃったんだろう?
だれかいませんか?」
おばあちゃんがそう言って、携帯けいたい電話の明かりをゆっくりと動かす。返事はない。建物の中には、壊れたガラスケースがいくつかと、その中にやはり中型犬くらいの大きさの恐竜が三体いるのがわかった。
「これ、まさか生きてるわけじゃないよな」
直也が言いながら、ステゴサウルスのほうへ近寄っていって、そっと背中の板のような部分にれた。そして、
「作り物だけど、なんていうか、すげぇリアルだ」
と、ため息をついた。わたしも気になって、おそるおそる近づいてみた。

本当だ。

恐竜の模型は何度も見たことがあるけど、ここにいるのは筋肉のつき方とか、皮膚ひふの質感がリアルなだけでなく、さっきまでそこを歩き回っていたかのような躍動感やくどうかんがあった。
「二人とも、もどってらっしゃい」
おばあちゃんの声にふり返ると、ダイくんはおとなしく、おばあちゃんの手の中にいた。
「ダイくん、大丈夫だいじょうぶ?」
かけよってのぞきこむと、ダイくんはとてもさみしそうな顔をしていた。
「ぼく、しってるかんじがしたの。でも、いくらよんでもへんじがないの…」
「なつかしい気持ちになったってことじゃないか?」
と、直也が言った。そうかもしれない。ダイくんが話しかけていた恐竜は、本来の大きさに比べたらはるかに小さいけれど、ダイくんと同じアパトサウルスの仲間にちがいなさそうだった。かつて一緒いっしょに暮らしていた家族を思い出して、なつかしくなったのかもしれない。
「ダイくん、これはね、本物によく似た作り物で、わたしたちみたいに生きてはいないんだよ。だから話しかけても返事がないの」
わたしがそう言うと、ダイくんはしょんぼりした様子でおばあちゃんの手の中へ顔をうずめた。

直也はもっと中を調べてみたいようだったけど、外が暗くなりはじめたので、わたしたちは「キョウリュウパーク」を後にした。

家に着いてからも、ダイくんは元気がなかった。わたしはなんて言葉をかけていいかわからず、夕食後はダイくんがねむりにつくまで、そばで絵本を読んであげた。

次の日。

教室に着いたとたん、直也に数枚の紙をわたされた。
「何?」
「キョウリュウパークのこと、気になってネットで調べてみたんだ。公式のホームページはとっくになくなってたけど、行ったことがある人の記事とかが残ってたから、プリントしてきたよ」
「ありがとう!」

記事には、主にこんな内容が書かれていた。

キョウリュウパークが、今から二十年ほど前にできたテーマパークであったこと。恐竜をメインにした施設でありながら、恐竜の模型が非常に小さく、中型犬くらいの大きさでしかなかったため、子どもたちからの人気が今ひとつだったこと。車でないと行けない場所にあることや、施設自体が小規模なものだったため、来客数が少なかったこと。しかし、恐竜の模型は小さいながらもリアルで躍動感に満ちていたため、一部のマニアの中では注目を集めていたこと……など。

続きは、当月号「ポピー・キーワード」を入れて、読もう

ポピー・キーワードとは?

読もう

ちび恐竜と絵留の日々のストーリー

たかはし先生のメッセージ

井上先生のメッセージ