前号までのあらすじ
給食の時間に食べたものが原因なのか、おなかが痛いと言い出したちび恐竜のダイくん。手の中でぐったりしているダイくんに対し、絵留はどうしたらいいのかわからなかった。
ぐったりしたダイくんを手のひらに乗せたまま、わたしは立ちつくしていた。
「絵留!」
背後から声をかけられた。直也だった。
「なんか様子がおかしいなと思ったら、おまえ、そいつ……」
「バッグにこっそり入って、ついて来ちゃったの」
「なんでまた? それより、具合悪そうだな。いつから?」
「おなかすいたって言うから、給食からちょっとあげたの。その後、お昼寝してたみたいなんだけど、さっきおなかが痛いって。それから、ぐったりしちゃって……」
直也はわたしの手の中をのぞきこんで、ダイくんの様子を見たあと、
「ちょっと待ってて! おまえんちに電話して、ばあちゃんに来てもらうように言うよ。家にいるんだろ? 先生には言えないし、おれらじゃどうにもできないから」
「うん。わかった」
直也は先生の目を盗んで、ダッシュで校舎の中へと向かって行った。
直也の提案は、今わたしたちができることの中で、まちがいなくベストだと思えた。よかった。直也がいてくれて。
わたしは少しほっとして、手の中をのぞきながら声をかけた。
「ダイくん、だいじょうぶだよ。おばあちゃんが来てくれるからね。がんばってね」
ダイくんはだまったままだったけど、わたしは「だいじょうぶだよ」と言いつづけた。それくらいしかできなかった。
やがて、直也がダッシュで戻ってきた。
「ばあちゃん、すぐ来るって。校門の近くに行って待とう」
「ありがとう」
わたしたちは、先生やクラスメイトに見つからないようにしながら、校門の近くまで移動した。少し待つと、車が止まって、おばあちゃんが降りてきた。わたしは今にも泣きそうだった。
「たいへんだったね。事情はわかった。だいじょうぶだから、あんたたちは授業に戻りなさい」
おばあちゃんは昔飼っていたネコ用のキャリーバッグにダイくんを入れると、再びタクシーに乗りこんで、さっそうと帰って行った。
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