前号までのあらすじ
ちび恐竜ダイくんのルーツを探っている絵留たち。偶然見つけた「キョウリュウパーク」。絵留とおばあちゃんは、そこの創設者の息子、佐藤さんに会えることになった。
佐藤さんは、古びた分厚いノートを持ってきて、わたしたちの前に置いた。
「これは、父の遺品です。どうぞ、ご覧ください」
おばあちゃんが手に取って、ゆっくりとめくった。そこには青いボールペンでかかれた文字や絵がびっしりと並んでいた。
佐藤さんは続けた。
「父の話、つまり中型犬くらいの大きさの恐竜がいる島に行ったという話は、誰にも信じてもらえなかったんです。まあ、当たり前でしょう。写真のような証拠が一切ないんですから。しかも、後からどんなに地図で調べても、そんな島は見当たらなかったそうです」
地図に載っていない島。
佐藤さんのお父さんが行ったという島は、うちのおじいちゃんが探していた島と同じなのかもしれない。
そして、ダイくんやその家族、仲間たちは、やはりそこにすんでいたのではないだろうか。
「じゃあ、佐藤さんのお父さんは、どうやってその島に行けたのですか?」
ずっと気になっていたことを聞いてみた。地図になくて、どこにあるかもわからない島に行くことができたなんて、そんな奇跡をどうやって起こしたのだろう。
「そのノートにもあるんですが、近くをボートで漂っているうちに、偶然たどりついたみたいなんです。しかも、前後の記憶が定かではなく、どうやって島にたどりついたか、また、どうやって島から出てきたかがはっきりしないのです」
「記憶が定かじゃない?」
わたしが聞くと、おばあちゃんがノートのある部分を指さした。そこには、だいたいこのようなことが書いてあった。
佐藤さんのお父さん、佐藤成一さんは、小型のボートで海をわたっていた。そこは、珍しい魚がよく釣れる場所で、ときどき訪れていたらしい。その日は思うように魚が釣れなかったので、いつもよりも遠くまで船を進ませた。すると、いつの間にか船が紫色の霧に包まれ、視界がすっかりさえぎられて、そのうち気を失ってしまった。気がついたときには、船は見知らぬ砂浜に乗り上げていて、方位磁針も狂っていた。帰りも、めったにない霧の晴れ間をぬって島を出たのはいいが、すぐにまた霧に包まれ、探しにきた人たちに発見されたときには、一週間ほどが経過していた。島にいる間は、一度しか夕陽がしずむのを見ていないというから、島には長くても一日いただけということになる。それでは、合計六日間も船の中で倒れていたことになる。
「それで、無事だったのですか?」
おばあちゃんが聞くと、佐藤さんは首をひねりながら答えた。
「ええ、飲まず食わずで気を失っていたとは信じられないほど、体には何の異変もなかったようです。不思議な話ですよね」
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ちび恐竜と絵留の日々のストーリー
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