生活習慣を整えるには、ゴールデンタイムの運動が大事!

生活習慣を整えるには、ゴールデンタイムの運動が大事!

こころとからだのリズムの話

今回の整うキーワードは

「あそびのゴールデンタイムにからだを動かす」

就学前までに生活習慣を整えたい! とお考えの方にぜひ読んでいただきたい、早稲田大学 人間科学学術院教授・医学博士の前橋 明先生の連載第2回です。なぜ子どもが夜なかなか寝ないのか? 理屈がわかり、改善のポイントまでわかります。

前橋 明先生

前橋 明先生

早稲田大学人間科学学術院教授・医学博士

乳児期からの子どもの睡眠時間や朝食、排便、体温、運動量などを体系的に調査・測定・分析し、子どもたちの抱える心身の問題とその解決法を探る研究を行う、子どもの健康福祉学の専門家。


いちばん体温が高くなる時間帯をご存知ですか?

ゴールデンタイムというとテレビの話のようですが、今回はからだを動かすのにもっとも効率的な時間帯の話です。人間のからだは夜眠るときに体温が下がり、日中に上がるという体温サイクルがありますが、中でももっとも高くなるのが15~17時です。実は、ここがあそびのゴールデンタイム。お子さんがからだを動かすことに配慮されているおうちのかたでも、時間帯まで意識されているかたは少ないのではないでしょうか。昨今、子どものあそぶ場所や時間はどんどん減っています。子どもの発達にふさわしい運動量を得るために、最も運動効率のよいゴールデンタイムを知ってほしいのです。

「動きどき」に動くことの大切さ

スポーツ選手が試合の前にウォーミングアップをするのは、体温が上がったほうがよい記録が出るからです。体温が上がると、血流がよくなり、栄養の供給がよくなり、筋肉がしっかり動く。もちろんお子さんも同じで、体温が高いタイミングでからだを動かすことはとても理にかなっています。15~17時は、まさに1日の中で最も「動きどき」と言える時間帯。もしも外でたくさんあそばせているのに、夜なかなか寝てくれないというお子さんがいたら、ゴールデンタイムの外あそびを実践してみてください。汗をかくくらい運動するのがおすすめ! きっと目に見えて効果が表れるはずです。

ゴールデンタイムを活用しないのはもったいない!

午前中は外あそびをするけれど、午後は室内あそびでのんびり過ごす。保育園で多く見られるケースです。でもこれではあそびのゴールデンタイムを活用できておらず、非常にもったいない。午前中にたくさん遊んでも、昼食や昼寝で疲れが回復してしまい、夜型生活の改善につながりません。午前だけではなく、午後も外あそびを! 実際、15時以降の外あそびを取り入れた保育園からは「登園時の遅刻が激減した」という声も寄せられています。この時間帯におうちに帰っているお子さんはもちろん、保育園に通っているお子さんは土日だけでも、ぜひ午後の外あそびを取り入れてみてください。

早寝早起きをかなえるなら、まずは運動から

小学校入学に向けて、生活リズムを改善したいと考えるおうちのかたは多いと思います。けれど、遅めの夕食やテレビの光刺激により夜型生活が定着してしまった子どもたちは、早く寝ようと促したくらいでは眠ってくれません。そんなときこそゴールデンタイムの外あそびです。ゴールデンタイムにしっかりからだを動かすと、夕方にはおなかがぺこぺこになり、夕食をしっかり食べることができます。夜は心地よい疲れとともに自然と眠くなり、ぐっすり寝た翌朝はすっきり起きられます。ゴールデンタイムの外あそびは、早寝早起きという子ども本来の生活リズムに直結しているのです。

どうして室内あそびではなく「外あそび」なのか

昨今のデジタルデバイスの過度な利用は、お子さんの生活にも影響を与えています。からだを動かすことなく目だけを酷使する活動が増え、体力低下だけではなく、視力低下の子どもたちも増えています。だからこそ、1日に1回は外で思いきりあそんでほしいのです。太陽の光刺激は近視進行の抑制につながりますし、外でのさまざまなあそびは空間認知能力や安全能力の向上にも役立ちます。また、友だちとの関わりやあそびの中での展開力や計画性、からだを使った成功体験・失敗体験は、テレビやゲームなどの2次元の世界にはないものです。外で汗をかいて熱を放出すれば、情緒が解放され、自律神経が整い、意欲や好奇心もわいてきます。外あそびでしかできない体験が、今の子どもたちには必要なのです。


前橋先生の運動知恵袋②

架空の緊急事態をつくる

鬼ごっこは子どもたちの定番のあそびですよね。実は、心をコントロールする力を磨く、とてもよいあそびでもあります。鬼から逃げるとき、危ない!つかまりそう!どうしよう!とハラハラドキドキする興奮が、大脳(前頭葉)を刺激します。あそびの中で、興奮と抑制という、感情が起伏する経験をたくさん積むことができます。これが、架空の緊急事態です。興奮し過ぎて度を超えた行動をしてしまった、などの失敗体験も含めて、大脳の刺激となり思いやりの心や将来展望の持てる人間らしさにつながっています。あそびを通した友だちとのコミュニケーションの中で、心を育んでいくのです。架空の緊急事態はいろいろなあそびの中に見つけることができますので、ぜひ意識してみてください。

やってみて!あそび紹介 しっぽ取り

しっぽになるヒモや紙テープを服の後ろに挟み、みんなで取り合います。一番多くしっぽを取った人がチャンピオン!

イラスト/小林直子 文/池田恵子 編集協力/KANADEL

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