

前号までのあらすじ
小説家になりたい夢を持った空志の前に、妙な石が現れた。石は、科学が発達しすぎて人々が空想する力を失った未来から、空想を採取しにやってきたという。
夕食後、ぼくはすぐに部屋に戻り、机の前に腰かけてぼんやりしていた。
正直、夕食のメニューが何だったか、ちゃんと覚えていない。さっきの石のことが気になって頭から離れないのだ。
あれは本当に起こった出来事か。それとも、ぼくの空想の産物か。時間が経てば経つほど、本当にあったなんて信じられない。石は消えてしまったし、ぼくの手元には証拠となるものが何一つないのだ。
しかし、もし本当で、また石がやってきたら? 質問に答えられなかったら、ぼくは空想する力をうばわれてしまう。
ぼくは、机の引き出しから、まだ使っていない真っさらなノートを取り出した。なんとなく、表紙に「ソラシ」とだけ書く。同じようなノートがたくさんあるためだ。
表紙を開いて、記念すべき一ページ目に、今日の日付と出来事、石からの質問、それに対するぼくの答えをメモした。
メモだから、当然ぐちゃぐちゃ。それを見ているうち、今日の出来事をちゃんと文章にまとめてみたくなった。
机の横の棚から、兄さんにもらったノートパソコンを取り出す。兄さんが高校に合格したときに買ってもらったものだから、もう五年も前のものだ。インターネットもつながっていない。
電源を入れて、文章を打つためのソフトを起動する。ぼくは黙々と文字を打ち始めた。パソコンで文章を書くなんて久しぶりだ。前は日記をつけていたけど、いつか誰かに読まれるかもしれないと思うと、なんだかあたりさわりのないことしか書けなくなった。本当にあるかもわからない機会についてまで、びくびくしてしまう自分にも嫌気がさして、いつしかやめてしまった。
気が済むまで書き終えて、一息つく。パソコンを使い慣れていないせいか、手を止めたとたん、一気に疲れを感じた。
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