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POPY Novels 2
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ソラシ(新たな決意)
第8話新たな決意

作: たかはしみか

絵: 井上恵美

前号までのあらすじ

春日部かすかべの空想の世界へ入りんだ空志そらしは、そこで彼女かのじょによく似た女王に出会う。また、自分のもとへ現れる石が、かつて自分が大切にしていた石であることを思い出して……。

めずらしい色をしている上に、表面が平らですべすべの石は、幼いぼくの想像力をかきたてた。だれも見たことのない不思議な文字が、いつかかび上がってくるんじゃないか、そんなことを考えて毎日見つめていたような気がする。

おもちゃもゲームもすぐにきてしまうのに、その石で遊ぶのは大好きだった。遊ぶといっても、周りから見たら、石をながめてにやにやしているだけだったかもしれないけど。

小学二年か三年のとき、国語の授業で物語を書かされたことがあった。ぼくはその石が登場する話を考えたんだ。

その石は本当はただの石ではなくて、未来からやってきた宇宙人の仮の姿。言葉を話すことはできないが、石の表面に文字を映し出して会話をすることができる。主人公の男の子と仲良くなるが、最後は未来に帰らなくてはならないというストーリー。

四〇〇字原稿げんこう用紙、五枚以内の短い物語。ぼくはクラスで一番に書き終えたんだ。真っ白な原稿用紙を前にうなり続けるクラスメイトをしり目に、教卓きょうたくへ向かってゆうゆうと提出しに行ったことを思い出した。
「母さんに見せたとき、こう言われたんだ」

ぼくはひとり言のようにつぶやいた。
「空志はお兄ちゃんとちがって、字がきたないわねって」

だから捨てたんだ。石も。物語も。

石は、ぼくの目の前に浮かびながら、沈黙ちんもくしていた。

何か言ってほしかった。いつもの悪態でも何でも。でも、石はただ沈黙していた。

ぼくも何も言えなかった。代わりにそっと手をばして、石にれた。

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