

前号までのあらすじ
春日部の空想の世界へ入り込んだ空志は、そこで彼女によく似た女王に出会う。また、自分のもとへ現れる石が、かつて自分が大切にしていた石であることを思い出して……。
珍しい色をしている上に、表面が平らですべすべの石は、幼いぼくの想像力をかきたてた。誰も見たことのない不思議な文字が、いつか浮かび上がってくるんじゃないか、そんなことを考えて毎日見つめていたような気がする。
おもちゃもゲームもすぐに飽きてしまうのに、その石で遊ぶのは大好きだった。遊ぶといっても、周りから見たら、石を眺めてにやにやしているだけだったかもしれないけど。
小学二年か三年のとき、国語の授業で物語を書かされたことがあった。ぼくはその石が登場する話を考えたんだ。
その石は本当はただの石ではなくて、未来からやってきた宇宙人の仮の姿。言葉を話すことはできないが、石の表面に文字を映し出して会話をすることができる。主人公の男の子と仲良くなるが、最後は未来に帰らなくてはならないというストーリー。
四〇〇字詰め原稿用紙、五枚以内の短い物語。ぼくはクラスで一番に書き終えたんだ。真っ白な原稿用紙を前にうなり続けるクラスメイトをしり目に、教卓へ向かってゆうゆうと提出しに行ったことを思い出した。
「母さんに見せたとき、こう言われたんだ」
ぼくはひとり言のようにつぶやいた。
「空志はお兄ちゃんと違って、字が汚いわねって」
だから捨てたんだ。石も。物語も。
石は、ぼくの目の前に浮かびながら、沈黙していた。
何か言ってほしかった。いつもの悪態でも何でも。でも、石はただ沈黙していた。
ぼくも何も言えなかった。代わりにそっと手を伸ばして、石に触れた。
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