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勉強に効く!脳コラム10選 ~ ❶ワーキングメモリが知的能力の基礎

勉強に効く!脳コラム10選 ~ ❶ワーキングメモリが知的能力の基礎

篠原菊紀先生の脳コラム


ワーキングメモリが知的能力の基礎

子どもの脳の発達ピークのおさらいと、このコラムによく登場する「ワーキングメモリ」について、改めて詳しくお話します。

 だから親子で一緒に楽しみながら、頭をしっかり使うこと、体をしっかり動かすこと、人としっかり関われることを好きになる機会を得るようにしましょう。 そして、その後の7~12歳くらいがピークになるところは、勉強すること、運動することに強くかかわる部位で、「ワーキングメモリ」が含まれます。

 では、ワーキングメモリとは何でしょう。一言でいえば、記憶や情報を一時的に保持し、それを組み合わせて答えを出す力で、勉強したり、仕事をしたり、人とコミュニケーションをとったりなど、知的能力の基礎になるものです。
 とはいえ、これではイメージしにくいですよね。そこで、二つのテストをやって、ワーキングメモリを実感してみましょう。

ワーキングメモリに関わる脳部位は、図(左脳)の赤い部分。

 ①は、数字を脳にメモして、逆から読みにいくという、記憶と作業を組み合わせたもので、ワーキングメモリの基礎形です。②は、何かを覚えて、間に余計なことをやり、また思い出すという、脳のメモ帳を多重に使っている、ワーキングメモリを入れ子状に使っている状態です。
 やってみるとわかるように、これはめんどくさくて、嫌な脳の使い方なんですが、この頭の使い方がワーキングメモリを鍛えるということなんですね。小学1年生では読んでも短い文章しか理解できません。それが長い文章を理解できるようになるのも、最初の文章が脳のメモに入りながら処理し続ける力がついてくるからで、ワーキングメモリの力が伸びているからです。二桁どうしの計算ができるようになるのもそうですし、体育でも手順を覚えたりなどがあるので、すべての教科がワーキングメモリのトレーニングになっています。

そうしたときに、元々使える脳のメモのイメージをしっかり持てていれば、この問題が今できないのは、自分の脳のメモでは○○をやりながら△△をすることができない、できない理由は○○が自動化していないせいだとわかるんです。 自動化というのは、無意識で脳のメモを使わなくてもできるようになるということで、自動化して脳のメモを使える状態にしていくというのが、スキルが身につくことであり、学習のプロセスです。

 小学校のいわゆる8歳の壁とか9歳の壁は、だいたいワーキングメモリでつまずいているんです。何かが自動化されていないので、脳のメモがいっぱいになってできなくなってしまう。サッカーでたとえるなら、敵にフェイントをかけるようなプレーは、ドリブルを無意識にできるようになるまでくり返し練習しなければできないということです。
 壁にあたったとき、何をくり返しやって自動化すればいいか、サポートしてあげられるように、親御さんはお子さんが過去にやった問題のパターンを覚えておいて、「今できないでいるこの問題は、あの問題のときと同じようなことだね」とアドバイスできれば、子どもにとってすごく役に立ちます。あれとこれが同じという感覚は自分で持てると一番いいのですが、親御さんがちゃんとつかんでおくということがとても重要です。


篠原 菊紀(しのはら きくのり)先生

篠原 菊紀(しのはら きくのり)先生

公立諏訪東京理科大学 情報応用工学科教授(脳科学、健康科学)。東京大学、同大学院教育学研究科修了。『頭がいい子を育てる8つのあそびと5つの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。『子どもが勉強にハマる脳の作り方』(フォレスト出版)など著書多数。NHK夏休みこども科学電話相談など、TV、ラジオ、雑誌でもご活躍。

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