勉強に効く!脳コラム10選 ~ ❹ 運動は苦手科目を底上げする!?

勉強に効く!脳コラム10選 ~ ❹ 運動は苦手科目を底上げする!?

篠原菊紀先生の脳コラム


運動は苦手科目を底上げする!?

今回は運動と脳の働きについてのお話です。お子さんにとっても、おうちのかたにとっても、運動の大切さがよくわかり、親子で体を動かしたくなりますよ。

 ある動物実験では、運動すると脳が重くなったり、アポトーシスという脳細胞の自殺が減ったりといったことが報告されています。私たちの調査でも、幼児期の運動プログラム(楽しく遊びながら、体を支える力、跳躍力、懸垂力を鍛える、柳澤秋孝先生考案の体系的なプログラム)により、幼児の切り替え力や抑制力にかかわるテストの成績が改善しています。
 一方で、全国学力テストと全国体力テストには相関関係があるものの、子どもの体力向上が本当に学力にプラスに作用するのか、実証的な研究では結論がバラバラです。

プラスに作用したという報告もあれば、作用していないという報告もあります。
 そこで北海道教育大学の森田先生らは、体力と学力に関する結果の違いは、科目によるもの、それも科目の得意・不得意によるのではないかと考え、調査しました。

 森田先生らは、469名の中学生を1年生時から3年生時まで追跡調査しました。調べたのは、全身持久力と国語・社会・数学・理科・英語の評定値です。今までの研究では、総合点、あるいは国語・数学・英語など各教科への影響が調べられていました。森田先生らはそこに結果の違いの原因があるのではないかと考え、5教科の最低評定値(苦手科目の得点)と最高評定値(得意科目の得点)を取り出して調べました。
 このとき、体力以外で学業成績に影響を与えることが報告されているBMI(肥満度)、社会経済要因(両親の学歴と世帯収入)、放課後の勉強時間も同時に調査し、それらの影響を統計的に除去する方法をとりました。

 ここで大事なのは、体力がつくと苦手科目の成績が上がるという「因果関係」が示されたことです。こういう因果関係は、同じ人を追跡調査するという方法でないと導けません。
 たとえば、「東大生は○○をしていた!」なんていうのは相関データです。それだけでは「○○をすれば学力がアップする」とは言えません。 ○○をした人と、しない人をたくさん追いかけ、他に学力に影響しそうな要因を除去して検討しないと、因果関係はわかりません。
 かしこい親御さんは、この辺の調査リテラシーをしっかり押さえておきましょう。


篠原 菊紀(しのはら きくのり)先生

篠原 菊紀(しのはら きくのり)先生

公立諏訪東京理科大学 情報応用工学科教授(脳科学、健康科学)。東京大学、同大学院教育学研究科修了。『頭がいい子を育てる8つのあそびと5つの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。『子どもが勉強にハマる脳の作り方』(フォレスト出版)など著書多数。NHK夏休みこども科学電話相談など、TV、ラジオ、雑誌でもご活躍。

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