前号までのあらすじ
奏太に誘われ、ベースを弾きたいと思うようになった奏。書店でドラムをやっている男子に会い、一緒にバンドをやろうと誘うが、奏が初心者だという理由で断られてしまう。
「うーん」
思わずうなってしまった。楽器の練習って、思った以上に難しい。誰かがつきっきりで教えてくれるわけじゃないから、自分が今やっていることが、正しいのかどうかすらよくわからない。
書店で買った初心者向けの本とにらめっこしながら、ベースの練習を始めて数日。毎日続けないと意味がないらしいから、最近は学校が終わると早く帰って、ベースをさわっている。
わたしが池野さんから借りたベースの弦は四本。弦は金属でできていて、上から下へいくにつれて、だんだん細くなる。左手で弦を押さえ、その弦を右手のピックや指ではじく。エレキギターを弾く人は、ほとんどピックを使うみたいだけど、ベースはピック派と指派に分かれる。コピーしたいバンド、アラスカンマラミュートのベースの人がピックを使っているから、わたしもとりあえずピック派になった。
まず、この弦を押さえるっていう行為が、結構たいへん。金属でできているから当然固いし、ある程度力を入れて押さえないと、右手ではじいたときにうまく音が出ない。
本に付いてきたDVDによると、ドゥーン、ドゥーンと鳴るはずが、
「ブンッ………ブンッ………ブンッ」
という感じで、すぐに音が途切れる。弦をしっかり押さえようと思って力を込めていると、左手の指先が真っ赤になる。痛い……。
いったいいつになったら、流れるような音の波をつくれるんだろう。ため息をつきながら、何度も同じことをくり返す。
「ブンッ………ブンッ………ブンッ」
あまり遠くない未来、奏太と一緒に演奏ができる。そう思うことで、自分を奮い立たせていた。
「奏! ちょっと来て」
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