アドラー心理学を子育てに活かす方法とは?
ほめない・叱らない子育て

更新日:2025年5月30日

   

アドラー心理学を子育てに活かす方法として、「ほめない・叱らない」アプローチが注目されています。この方法では、親と子どもが対等な関係を築くことが重視され、子どもを一人の人間として尊重することが基本です。ほめたり叱ったりすることは、上下関係を生み出し、子どもの自立を妨げる可能性があります。
「ほめない・叱らない」代わりに、子どもが自分の行動の結果を学び、自己肯定感を育むための「勇気づけ」が推奨されます。感謝の言葉をかけたり、子ども自身に考えさせることで、より良い成長を促すことができるのです。
この記事では、アドラー心理学の理念を基にした子育ての具体的な実践方法を探ります。

【1】アドラー心理学とは?

アドラー心理学は、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーによって創始された心理学で、主に「個人心理学」として知られています。この心理学の核心は、人間の行動が過去の経験ではなく、未来の目的に基づいているという「目的論」にあります。アドラーは、個人を心と身体、意識と無意識などの要素で分割せず、全体として捉える「全体論」を提唱しました。
また、アドラー心理学では、対人関係がすべての問題の根源であると考え、個人が社会的存在であることを強調します。重要な概念の一つに「共同体感覚」があり、これは他者とのつながりや貢献感を持つことが精神的健康に寄与するとされています。さらに、「勇気づけ」という技法を通じて、他者を尊重し、自分自身の課題に主体的に取り組むことが奨励されます。これにより、個人は自己決定性を持ち、より幸福な生活を送ることができるとされています。

アドラー心理学に基づく子育てとは

アドラー心理学に基づく子育ては、子どもを一人の人間として尊重し、対等な関係を築くことを重視します。このアプローチでは、親が子どもをほめたり叱ったりするのではなく、「勇気づけ」を通じて子どもの自立を促します。

関係性 親子は対等な関係であり、信頼と尊敬に基づく横の関係を築くことが重要。
関わり方 子どもを一人の人間として尊重し、感情的な反応を避け、共感的に接する。
声掛け ほめるのではなく、「ありがとう」や「助かった」といった感謝の言葉を使い、子どもを勇気づける。
勇気づけ 子どもが困難を克服する力を育むために、日常の小さな成功や努力を認め、励ます。

このように、アドラー心理学に基づく子育ては、子どもが自分の力で成長できるように支援することを目的としています。親は子どもに対して信頼を持ち、共感を示すことで、より良い関係を築くことができます。

なぜ今「アドラー式子育て」が注目されているのか?

近年、子どもたちの自己肯定感や自立心の低下が問題視されており、アドラー式子育てはその解決策として注目されています。アドラー心理学は、従来の「ほめる」「叱る」といった上下関係を強調する方法とは異なり、親と子どもが共に成長する「横の関係」を築くことを目指しており、特に「勇気づけ」という概念は、子どもが自分の力で困難を乗り越える力を育むために重要です。親が子どもの努力や過程を評価し、感謝の気持ちを伝えることで、子どもは自分の存在価値を実感しやすくなります。
また、アドラー心理学は、過去の経験にとらわれず、未来に目を向けることを良いこととして勧めています。これにより、親自身も成長し続けることが求められ、子どもにとって良い手本となることができます。
このように、アドラー式子育ては、現代の育児における新たな視点を提供し、親子関係の改善や子どもの成長を促進するための有効な手段として広がりを見せています。

【2】「ほめる」「叱る」子育ての問題点

「ほめる」「叱る」子育ての問題点は、自己肯定感に与える影響にあります。「ほめる」育児は、条件付きの自己肯定感を育てる危険があり、子どもはほめられないと行動しなくなることがあります。一方、「叱る」ことが過度になると、子どもは自己評価を下げ、失敗を恐れるようになります。バランスの取れたアプローチが重要です。

「ほめる」育児の落とし穴

ほめる育児は、子どもの自己肯定感を育むために重要な手法とされていますが、実は多くの落とし穴があります。
まず、ほめることが必ずしも子どもの自信を高めるわけではないという点です。子どもは「ほめられるために行動する」ようになり、自己価値を他者の評価に依存するようになります。例えば、「すごいね、1番になったね!」といったほめ方を繰り返すと、子どもは「1番でないと価値がない」と感じるようになり、条件付きの自己肯定感が育まれてしまいます。このような考え方は、失敗したときに自己評価が急落する原因となります。
次に、ほめることが「ほめ待ち」状態を生むことも問題です。子どもは、親からの評価を求めるあまり、自発的な行動をしなくなることがあります。たとえば、友達におもちゃを譲る行為が、他者の気持ちを考えた結果ではなく、ほめられることを期待して行われるようになるのです。
このように、ほめる育児には注意が必要であり、バランスを取ることが重要です。子どもが自分自身を肯定できるような育て方を心がけることが、健全な成長につながります。

「叱る」ことが子どもに与える自己肯定感への影響

叱ることは子どもの成長において重要ですが、その方法によっては自己肯定感に大きな影響を与えることがあります。叱る際に注意すべきは、子どもの「行動」と「人格」を分けて考えることです。例えば、「なんでこんなこともできないの!」感情的に怒ってしまうと、子どもは「自分はダメな人間だ」と感じやすくなり、自己肯定感が低下します。適切な叱り方は、子どもの行動に焦点を当て、「その行動は良くないが、あなた自身は大切な存在だ」と伝えることです。
また、叱った後には叱った内容を振り返り、次にどうするかを一緒に考えることで、子どもは前向きに行動を改善しようとする意欲が高まります。
このように、叱る際には冷静さを保ち、子どもの自己肯定感を傷つけないよう心掛けることが大切です。正しい叱り方を実践することで、子どもは自分の価値を理解し、健全な自己肯定感を育むことができます。

【3】アドラー心理学が教える「勇気づけ」の子育て

アドラー心理学に基づく「勇気づけ」は、子どもをほめたり叱ったりせず、彼らの気持ちに寄り添い共感することで、自立心と社会との調和を育む方法です。このアプローチでは、親と子どもは対等な関係を築き、信頼を基にしたコミュニケーションを重視し、困難を乗り越える力を育てます。

「勇気づけ」とは何か?単なる励ましとの違い

アドラー心理学における「勇気づけ」とは、子どもが自分の力を信じて困難を乗り越えるためのサポートをすることです。これは単なる励ましとは異なり、子どもの存在や努力そのものを認めることに重点を置いています。例えば、子どもが何かを達成したときに「すごいね」とほめるのではなく、「あなたが頑張ったことを見ていたよ」と言うことで、努力を評価します。

  • 「勇気づけ」と「励まし」の違い
    励ましは結果や成果に注目しがちですが、勇気づけは過程や努力に目を向けます。これにより、子どもは自分の成長を実感しやすくなります。
  • 内面的な成長
    勇気づけは、子どもが自分の内なる力を信じることを促します。これに対し、単なる励ましは外的な評価に依存することが多く、子どもが「評価されないと認めてもらえない」と感じることがあります。

子どもの「共同体感覚」を育てる重要性

共同体感覚とは、自分が家族や地域、学校などの一員であるという感覚を指し、他者とのつながりや貢献を意識することが含まれます。この感覚を育むことで、自己受容や他者信頼、他者貢献の意識を高めることができます。

  • 社会的つながりの強化
    共同体感覚を持つ子どもは、他者との関係を大切にし、協力し合うことができるため、友人や家族との絆が深まります。これにより、孤立感が減り、精神的な健康が促進されます。
  • 自己肯定感の向上
    自分が共同体の一員であると感じることで、子どもは自分の存在価値を認識しやすくなります。これが自己肯定感を高め、困難に立ち向かう勇気を育む基盤となります。
  • 社会貢献の意識
    共同体感覚を育てることで、子どもは「自分は他者に貢献できる存在だ」と感じるようになり、社会に対する責任感や協力の意識が芽生えます。

対等な関係で築く親子の信頼関係

アドラー心理学では、親と子どもが「対等な関係」を持つことが重要とされています。親が子どもを一方的に指導するのではなく、子どもの意見や感情を理解し、共感することが信頼関係を深める鍵です。

  • 信頼の構築
    親が子どもを対等な存在として扱い、子どもが自分の意見を自由に表現できる環境を作ることで、子どもは自分の考えが尊重されていると感じ、安心して成長できます。
  • 自立心の育成
    親が過度に干渉せず、子どもが自分の行動に責任を持つことを促すことで、自己肯定感が高まります。これにより、子どもは困難に直面したときにも自分の力で乗り越えようとする意欲が育まれます。
  • コミュニケーションの質の向上
    親が子どもの気持ちに寄り添い、共感することで、子どもは自分の感情を理解してもらえると感じます。子どもも親の意見を受け入れやすくなり、オープンな対話が生まれます。
      

【4】「勇気づけ」の効果的な声かけ例

アドラー心理学における「勇気づけ」は、子どもが困難を乗り越える力を育むための重要なアプローチです。ここでは、具体的な声かけの例を通じて、子どもに自信を与え、自己肯定感を高める方法を探ります。日常の中で実践できる「勇気づけ」の声かけを学び、子どもの成長を支えるヒントをご紹介します。

「失敗しても大丈夫、次があるよ」

失敗を恐れず挑戦することを促す言葉です。この声かけは、子どもが失敗を経験したときに特に有効です。「失敗は成長の一部」と理解させることで、子どもはリスクを取ることに対する恐れを軽減し、次の挑戦に向けて前向きな気持ちを持つことができます。

「あなたの努力が素晴らしいね」

この言葉は、結果ではなく過程を重視する勇気づけの一例です。子どもが何かに取り組んだ際、その努力を認めることで、自己肯定感を高めます。例えば、宿題を頑張った子どもに対してこの言葉をかけることで、結果に関わらず、努力そのものが評価されることを伝え、次回へのモチベーションを引き出します。

「君がいてくれて助かるよ」

この言葉は、子どもの存在そのものを大切にするメッセージです。子どもが家庭や学校で貢献していることを認めることで、彼らの自己価値感を高めます。特に、家事や手伝いをしてくれたときにこの言葉をかけることで、子どもは自分が必要とされていると感じ、より積極的に行動するようになります。

「その工夫は素晴らしいね」

子どもが自分なりの方法で問題を解決したときにかける言葉です。この声かけは、創造性や独自性を評価するものであり、子どもが自分の考えを大切にすることを促します。自分のアイデアや工夫が認められることで、子どもは自信を持ち、さらなる挑戦を楽しむようになります。

「一緒に頑張ろう」

この言葉は、協力の精神を育むためのものです。子どもが何かに取り組む際に一緒にサポートする姿勢を示すことで、子どもは孤独を感じず、安心して挑戦できます。このように、共に努力する姿勢を示すことで、親子の絆も深まり、子どもはより積極的に取り組むようになります。

【5】アドラー心理学に基づく子育てについてよくある質問

アドラー心理学ではほめないのはなぜですか?

アドラー心理学では、ほめることが子どもを他者の評価に依存させ、自主性を奪うと考えられています。ほめられることを目的に行動するようになると、子どもは自分の内なる動機を失い、他者の期待に応えようとするあまり、自己評価が低下する可能性があります。そのため、ほめるのではなく、子どもの努力や存在を認める「勇気づけ」が推奨されます。

アドラー心理学の欠点は何ですか?

アドラー心理学の欠点として、実践が難しいと感じる人が多い点が挙げられます。特に、親が子どもに対して「ほめない」「叱らない」アプローチを取ることは、従来の教育方法と大きく異なるため、戸惑いや孤独感を感じることがあります。また、理論が抽象的であるため、具体的な実践方法を見出すのが難しい場合もあります。

アドラー心理学の名言で子育てに関係するものは?

アドラーの名言の一つに「子どもは自分の力で問題を解決する力を持っている」というものがあります。この言葉は、親が子どもを信じ、サポートすることの重要性を示しています。子どもが自分の力で成長するためには、親が過度に干渉せず、子ども自身の経験から学ぶ機会を与えることが大切です。

【6】自ら学ぶ力を育む「幼児ポピー」

アドラー心理学では、子どもが自分の力で問題を解決する能力を育むことが重要視されています。2歳から6歳までを対象にした家庭学習教材「幼児ポピー」では、親子のふれあいを通して子どもが「自ら学ぶ力」を育むことを大切にしています。
また、遊びの中で「もじ・かず・ことば」を学び、「こころ・あたま・からだ」をバランスよく育てる内容が特徴です。カラフルな誌面や楽しいデジタル教材で好奇心を刺激し、「できた!もっとやりたい!」という気持ちを引き出すことで自己肯定感を高めることができる教材となっています。

監修者プロフィール
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